特集 機能性脂質・脂肪酸の多彩な生理活性と病態形成
脂肪酸バランスと疾患リスク(久山町研究)
血管医学 Vol.17 No.2, 59-65, 2016
「Summary」海外の疫学調査や臨床研究において,ω3脂肪酸の摂取増加により心血管病の発症リスクが低下することが報告されている.一方,わが国の地域住民を対象に血清EPA/AA比とこれらの疾患との関係を検討した疫学研究はきわめて少ない.そこで,福岡県久山町の地域住民を対象とした疫学研究(久山町研究)の成績をもとに,血清EPA/AA比と心血管病発症との関係を検討した.血清EPA/AA比の中央値0.41(四分位範囲0.29~0.59)であった.血清高感度CRP 1.0mg/L以上を呈する心血管病発症の高リスク群において,血清EPA/AA比の低下に伴い心血管病の発症リスクは有意に増加した(p for trend=0. 002).血清EPA/AA比はEPA摂取量に依存することから,EPAを多く含む食物の摂取を促すことは,将来の心血管病を予防するうえできわめて有効であることが示唆される.
「はじめに」脂肪酸は,脂肪または油の構成成分であり,長鎖炭化水素の1価のカルボン酸である.脂肪酸は炭素数や炭素と炭素のつながり方などの違いにより,多くの種類が存在する.炭素間の結合に二重結合のない飽和脂肪酸,二重結合が1つの一価不飽和脂肪酸,二重結合を2つ以上含む多価不飽和脂肪酸(PUFA)に分けられる.
「KEY WORDS」ω3脂肪酸,血清EPA/AA比,心血管病,疫学研究
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。