特集 機能性脂質・脂肪酸の多彩な生理活性と病態形成
飽和脂肪酸と血管医学
血管医学 Vol.17 No.2, 53-57, 2016
「Summary」パルミチン酸に代表される飽和脂肪酸の摂取は心血管代謝疾患のリスクになることが知られ,さまざまなガイドラインで飽和脂肪酸摂取の制限が提唱されている.その根拠として,飽和脂肪酸摂取の制限によるLDLコレステロールレベルの低下が挙げられているが,飽和脂肪酸の作用はLDLコレステロールに関連するものに限らない.脂質の細胞障害性に着目する脂肪毒性の研究では,従来からパルミチン酸の直接的な細胞障害作用について幅広い検討がなされてきた.最近,そのような直接作用だけでなく,炎症誘導による組織機能障害など,新たな機序が明らかにされている.このような心血管代謝疾患における飽和脂肪酸の幅広い作用機序のさらなる理解は,スタチン治療の残余リスクを考えるうえでも重要であろう.
「はじめに」従来より,脂質が動脈硬化をはじめとする心血管代謝疾患のリスクになることは,さまざまな臨床研究によって指摘されている.特に飽和脂肪酸の豊富な食事は2型糖尿病や冠動脈疾患と関連する1)ことから,飽和脂肪酸の制限や,飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えることが推奨されている.
「KEY WORDS」脂肪毒性,慢性炎症,平滑筋細胞,マクロファージ
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。