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特集 機能性脂質・脂肪酸の多彩な生理活性と病態形成

Overview リポクオリティが制御する血管医学

有田誠

血管医学 Vol.17 No.2, 7-9, 2016

脂質は生命を包み,区画する生体膜を構成する細胞の基本構成要素であり,エネルギー源としての役割に加え,生理活性物質やその前駆体として働く多彩な役割を担う生体分子である.よって,脂質分子の多様性や生理機能を理解することは,生命秩序の原理を知るうえできわめて重要である.これら脂質分子種の多様性が司る機能的な特質を「リポクオリティ」と捉え,それらが果たす生物学的意義について考える必要がある(図1).このような背景のもと,平成27年度より新学術領域研究「脂質クオリティが解き明かす生命現象」が発足した(http://lipidbank.jp/lipoquality).もう少し身近な話に進めてみよう.ヒトの健康維持において脂肪酸バランスが重要であるとされている.これはすなわち,魚食中心であった日本人の食事が西洋食に変わってきたことで,脂肪酸の質,すなわちω3脂肪酸の減少とω6脂肪酸や飽和脂肪酸,トランス脂肪酸の増大が認められ,そのことと心血管病やメタボリックシンドロームのリスク増大との間に相関があるのではないかと考えられている.食物として摂取する脂質の量のみならず質の違いが重要であると考えられているわけだが,本当なのか,また,その分子機序はいかに? ということが大事になってくる.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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