「Summary」近年,腸内細菌と代謝性疾患発症との関連性が注目されて盛んに研究されている.また,腸内細菌が腸管での免疫細胞の分化を含めた腸管免疫調節に大きな影響を与えていることもわかってきた.代謝と免疫の両者が病態に関与する動脈硬化の研究領域でも,腸内細菌の関与が報告されている.われわれも「腸管からの動脈硬化予防」の研究を進めるなかで,腸内細菌と冠動脈疾患との関連を調査しており,心血管イベント発生の予測因子としての意義や,将来の疾患予防の治療標的としての可能性を探索している.
「はじめに」心筋梗塞や脳梗塞を代表とする動脈硬化性疾患による死亡は,日本人では,癌に次いで死亡原因の第2位である.高齢化による動脈硬化性疾患増加の問題と,さらに冠動脈疾患のみならず脳・頸動脈狭窄や下肢閉塞性動脈硬化症の合併と重症患者の増加が課題となってきている.高血圧・脂質異常症・糖尿病などが危険因子として挙げられ,健康診断などで各疾患のマーカーを測定し,動脈硬化進展予防のために生活指導や必要に応じて治療が行われている.
「Key words」動脈硬化,腸内細菌,腸管免疫,制御性T細胞