「Summary」炎症反応は外的傷害に対する生理的な応答反応であるが,適切に制御されなければ慢性炎症に結び付く.従来,炎症の収束は炎症性刺激の減弱に伴い,受動的に進行すると考えられてきたが,新たな“炎症収束性脂質メディエーター”が発見され,生体は“能動的に”炎症収束プロセスを実行していることが明らかとなってきた.これらの脂質メディエーターは,好中球・マクロファージの機能を制御し,ホメオスタシスの維持に重要な働きを持っているが,生体内ではごく微量で生理活性を発揮しており,解析には液体クロマトグラフ質量分析法を用いる必要がある.本稿では炎症収束性脂質メディエーターによる炎症収束について概説し,本研究分野のリポ蛋白研究への応用についても紹介する.
「はじめに」ω3多価不飽和脂肪酸の有用性,なかでも心血管疾患への予防効果が注目され始めたのは,1970年代後半のDyerbergらによるグリーンランドでの疫学調査の報告1)からである.わが国においても疫学研究2)3)ならびに高純度エイコサペンタエン酸(EPA)製剤を用いた介入試験4)の結果,ω3多価不飽和脂肪酸の心血管疾患への有用性が示された.
「Key words」炎症収束性脂質メディエーター,能動的な炎症収束プロセス,ω3多価不飽和脂肪酸,ω6多価不飽和脂肪酸,エフェロサイトーシス,液体クロマトグラフ質量分析