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抗酸化,抗糖化因子と血管医学

グルタチオンペルオキシダーゼ

大和真由実筒井裕之

血管医学 Vol.12 No.4, 71-78, 2011

グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase;GPx)は,還元型グルタチオンを利用して,過酸化水素や脂質過酸化物を還元する細胞内外の主要な抗酸化酵素である.GPx遺伝子組み換えマウスやGPx様化合物エブセレンを用いた研究から,心疾患および脳虚血モデル動物に対するGPxの保護効果が示されている.われわれは,カルシウム拮抗薬であるニフェジピンが,脳虚血再灌流後の梗塞形成に対し保護効果をもつこと,その機序として,脂質過酸化物蓄積の低下,ミトコンドリアGPx活性の上昇によるものであることを示した.GPx様化合物のみならず,間接的にGPx活性を上昇させる化合物の探索が,種々の酸化ストレス関連疾患の治療へとつながる可能性が示唆される.

Key words
・過酸化水素 ・脂質過酸化物 ・ニフェジピン ・カルシウム拮抗薬・脳虚血再灌流

はじめに

 わが国において,「心疾患」,「脳血管疾患」は死因の第2位と第3位を占め1),国民の健康および医療経済両面において重要な問題となっており,その病態メカニズム研究および治療法開発が望まれている.動脈の閉塞,または狭窄により脳虚血をきたすと酸素や栄養の不足となり,組織が壊死状態となり梗塞を発症する.できるだけ早期の血流再開通は必須であるが,その際に細胞障害性のある活性酸素が生成し,連鎖反応的に生体膜,機能性タンパク質,DNAの酸化を引き起こし,いわゆる「酸化ストレス」を惹起すると考えられている.酸化ストレスに対する防御システムとして,生体はさまざまな抗酸化酵素や抗酸化物質を備えており,グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase;GPx)もそのひとつである.本稿では,心疾患および脳血管疾患に対するGPxの役割について紹介する.

GPxの機能と局在

 GPxは,還元型グルタチオンを利用して,過酸化水素(H2O2),脂質ヒドロペルオキシド(ROOH),リン脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)を還元し,水やヒドロキシ型脂質を生成する細胞内外の主要な抗酸化酵素である(図1).

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