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血管系の橋渡し研究

カルボニルストレス阻害薬

森谷祐介永田栄一郎瀧澤俊也

血管医学 Vol.12 No.4, 53-64, 2011

Summary
終末糖化産物(advanced glycation end products;AGEs)は生体内のタンパク修飾が亢進した状態により生成,増加し,糖尿病,腎不全など多岐にわたる疾患の病態に関与する.その一連の病態はカルボニルストレスととらえられている.カルボニルストレスによる細胞障害は,タンパク修飾によるタンパク機能不全・細胞機能不全と,AGEsの受容体であるreceptor for AGEs(RAGE)を介する細胞内シグナル伝達系による.それらを抑制する薬物療法が研究されており,その標的は大別するとAGEs形成阻害,AGEs架橋切断,AGEs-RAGE阻害である.各薬剤について糖尿病モデルを中心とする動物実験において有効性がみられ,臨床試験がすすめられている.

Key words
◎カルボニルストレス ◎AGEs ◎RAGE ◎メイラード反応

はじめに

 生体内に存在する糖,脂質は代謝異常や酸化ストレス下において反応性カルボニル化合物(reactive carbonyl compounds;RCOs)に変化し,タンパクあるいはアミノ酸のアミノ基と非酵素的に反応して終末糖化産物(advanced glycation end products;AGEs)や脂質過酸化最終産物(advanced lipoxidation end products;ALEs)などの最終産物となる.AGEs,ALEsは生理活性を有しており,RCOsが増加し生体内のタンパク修飾が亢進した状態はカルボニルストレスととらえられている.カルボニルストレスは糖尿病,腎不全,動脈硬化,脳梗塞,急性呼吸促迫症候群(acuterespiratorydistresssyndrome;ARDS),慢性心不全,気分障害,統合失調症,アルツハイマー病など多岐にわたる疾患の病態の一因として重要である.本稿ではカルボニルストレス,とくにAGEsを標的とする薬物療法について概説する1)2)

AGEs

 AGEsは,メイラード反応と呼ばれる非酵素的反応により糖化修飾された最終反応生成物である.Maillardは1912年に,アミノ酸と還元糖の混合溶液を過熱すると褐色化すること(味噌や醤油に代表される)を発見し3),それ以来メイラード反応は長く食品化学の分野で研究されている.
 具体的には,メイラード反応はタンパクまたはアミノ酸のアミノ基とグルコースやほかの還元糖のカルボニル基が非酵素的に反応し,シッフ塩基を経てアマドリ転位生成物に至る前期反応と,さらに酸化,脱水,縮合,環化などを受け分子間架橋形成や開裂など複雑な反応を経て,蛍光・褐色変化・分子架橋構造を特徴とする後期反応の2つの段階に大別される(図1).

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