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マイクロRNAと循環器疾患

心不全とマイクロRNA

佐藤衛

血管医学 Vol.12 No.3, 69-76, 2011

Summary
心不全とは,心臓のポンプ機能が失調し全身の血液循環を保持できなくなった病態を示す.心不全は,心筋梗塞症,心筋症や心臓弁膜症などさまざまな心血管疾患で生じる.最近,マイクロRNA(microRNA;miRNA)は,細胞内に存在する長さ20~25塩基ほどの一本鎖RNAを示し,さまざまな遺伝子の発現を調節する機能を有するまったく新しい遺伝子発現制御にかかわる重要な機能性RNA分子として注目されている.循環器領域でもさまざまなmiRNAが,心不全の発症やその進展にかかわることが報告されている.とくに,いくつかのmiRNAによる標的遺伝子の発現調節が,心筋症の発症や心筋梗塞後の心筋リモデリングと関連し,心筋での間質コラーゲンの増生,心筋細胞肥大やアポトーシス誘導などに関与していることが報告されている.本稿では,心不全の発症やその進展にかかわるmiRNAについて新知見を含めて総説する.

Key words
◎心筋アポトーシス ◎心筋線維化 ◎心筋肥大 ◎心筋リモデリング ◎心収縮力障害 ◎不整脈

マイクロRNAとは

 マイクロRNA(microRNA;miRNA)は,20~25塩基から構成される一本鎖RNAであり,ほかの遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられている非翻訳性RNAの一種である.おもに標的遺伝子のメッセンジャーRNA(messengerRNA;mRNA)の3’非翻訳領域にある相補的配列と結合し,その翻訳を抑制することで,その遺伝子発現調節作用を発揮するとされている1)-3).
 すなわち,miRNAの発現が増加した場合,miRNAが標的遺伝子のmRNAと相補的に結合し,mRNAの発現を抑制し,最終的に標的遺伝子のmRNAからのタンパク合成を抑制する4).逆に,miRNAの発現が減少した場合,miRNAの減少に伴い標的遺伝子のmRNAの発現は増加し,最終的にタンパク合成も増加する(図1)4).

心不全の発症・進展に関与するmiRNA

 心不全は,さまざまな心血管疾患で発症するが,その発症のメカニズムとして,①心筋肥大とリモデリング,②心筋の線維化,③心収縮力障害,④不整脈,⑤梗塞後の血管新生,⑥心筋アポトーシスなどがあげられる.また,最近の報告から,これらのメカニズムには多くのmiRNAが関与していることが明らかとなってきた(図2)5).

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