Summary 止血栓の主たる構成要素であるフィブリン(線維素)を溶解する反応が線溶反応であり,プラスミノゲンアクチベータ─プラスミン系がその主軸を担う.線溶系は血栓形成に直接的な作用を有するのではなく,形成された血栓の溶解を介してその増大と成長を制御する.線溶系の破綻は止血栓の不安定化や難溶化を引き起こし,出血や虚血という危機的状態をもたらす.プラスミノゲンアクチベータ─プラスミン系の補填機構として,白血球エラスターゼによるフィブリン分解の可能性やTFPIの分解を介する血栓増大など,病変局所での白血球などの血球系との連関も明らかにされつつある.また線溶系は,組織型プラスミノゲンアクチベータを介して中枢神経系で記憶,神経の可塑性,細胞死など生体内のさまざまな生命現象に深く関与する.