Summary アテローム血栓症は,プラーク破綻に伴う閉塞性血栓の形成により発症する.しかし,プラーク破綻が必ずしも閉塞性血栓の形成につながるわけではなく,動脈硬化血管に非閉塞性の壁在血栓を伴ったプラーク破綻像を認めることは少なくない.このことは,動脈硬化巣においてプラーク破綻はまれな現象ではなく,その多くが臨床的にサイレントである可能性を示唆しており,プラーク破綻後の血栓の成長とサイズがイベント発症を決定すると考えられる.筆者らはその病理学的検討から,「血栓の成長=血栓症」という認識でアテローム血栓症における血栓の成長機序を検討してきた.止血機序と血栓の成長機序の相違点が明らかになれば,出血性副作用の少ない抗血栓薬の開発につながることが期待される.