Summary
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を服用している集団では,発癌リスクが低いことが疫学的に示されている.NSAIDの標的分子であるプロスタグランジン合成酵素COX-2は,炎症と癌の双方で発現誘導されており,その下流で合成されるPGE2が発癌に重要な役割を果たすことがマウスモデルを用いた遺伝学的解析で明らかにされている.また,COX-2/PGE2経路依存的に形成される癌の炎症性微小環境では,マクロファージが浸潤・活性化し,産生されるTNFαは炎症シグナルネットワークの増強や,癌細胞のWntシグナル亢進などの作用により発癌を促進する.さらに,COX-2/PGE2経路と常在菌による感染刺激の相互作用が,腫瘍組織での炎症反応発生に重要であることが明らかになってきた.
全文記事
生活習慣病と癌の基盤病態としての慢性炎症
癌と炎症
掲載誌
血管医学
Vol.12 No.1 67-72,
2011
著者名
大島正伸
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
感染症
/
癌
診療科目
腫瘍内科
媒体
血管医学
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。