これからの緑内障診療のために
患者の治療へのモチベーションアップ(第1回)
Frontiers in Glaucoma No.61, 53-58, 2021
緑内障治療は,アドヒアランス(以前はコンプライアンスと言われていました)が重要な因子であることは周知の事実です.コンプライアンスとは服薬遵守を意味し,医師の指示による服薬管理という意味合いで用いられます.アドヒアランスは直訳としては「固定」や「支持」という意味であり,患者の理解や意志決定,治療への協力に基づく治療遵守のことです.治療は医師の指示に従うという考えから,患者との相互理解のもとに行っていくものであるという考えに変化してきたことが,コンプライアンスからアドヒアランスという概念の変化に繋がっています.最近は継続通院に関しても注目が集まりつつあり,継続的に患者に来院していただけない限り点眼状況などのアドヒアランスの確認すら行えません.
筆者は2017年に神戸大学附属病院を退職し,開業して4年経ちます.緑内障ファーストの診療を行い,緑内障日帰り手術を手がけているかたわら,他病院で緑内障専門外来や緑内障手術の指導・執刀も行っています.大学病院からクリニックまでさまざまなレベルの緑内障患者を診療しており,大病院とクリニックでは緑内障診療での役割がかなり異なっていることや,その患者層もまったく異なることを痛感しています.そういった観点から本稿では,継続通院やアドヒアランスも含むよりよい(より楽しい?)緑内障診療に関して,筆者の心がけや具体的な対応方法について述べたいと思います.第1回は総論的かつ導入期診療に関して執筆します.本稿の医学的なエビデンスはほぼありませんし,内容を応用されても実際に効果が出るかはわかりませんが,診療のご参考にしていただければと思います.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。