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日本緑内障学会

第21回日本緑内障学会 シンポジウム4:緑内障スクリーニングとフォローアップ 緑内障によるロービジョン

山崎芳夫

Frontiers in Glaucoma No.41, 43-44, 2011

緑内障性視野障害における問題点
 昭和24年に制定された身体障害者福祉法では,両眼の視力がそれぞれ0.1以下,一眼の視力が0.02以下で他眼が0.6以下,両眼の視野がそれぞれ10度以内,両眼による視野の2分の1以上が欠損のいずれかに該当しなければ視覚障害者とは認定されず,公的支援を受けることはできない.全国で身体障害者が約300万人いる中で,視覚障害者は約8.3%とされている.視覚障害者の原因疾患として緑内障は,1988年に糖尿病網膜症,白内障に次いで第3番目であったが,2005年には約20%を占め,最多となっている.
 緑内障は末期まで中心視力が維持されるため,日本の視覚障害者の認定基準と合致しない.また,緑内障性視野障害は傍中心暗点や鼻側階段に始まり,鼻側穿破を特徴としており,求心性狭窄は稀であることも一つの大きな問題である.さらに視野障害の評価は,ゴールドマン視野計(GP)ではなく,すでに静的自動視野計,特にハンフリー視野計(HFA)が主体となっている.そのため,後期緑内障患者のQOLと静的自動視野計による両眼加算視野を検討し,静的自動視野計を用いた障害認定基準の構築が急務である.

後期緑内障患者におけるQOLと視野の関係

 われわれは後期緑内障患者の臨床像の把握と進行過程を理解するために,7施設で前向き共同研究を実施した.解析対象129例は平均年齢66歳で,HFA 24-2でのMD値は軽症側-18dB,重症例-27dBと,非常に末期の視野を呈し,病型分類はPOAGが最も多く,次がNTGであった.
 患者の日常生活不自由度は,2003年にSumiらが発表した,文字の読み書き,文章の読み書き,自宅近所の歩行,交通機関を利用した移動,食事,着衣・整容,その他という7項目30問からなる問診表を用いて評価した.その結果,後期緑内障患者は日常生活において,文章の読み書きと自宅近所の歩行に最も不自由を自覚していた.また,視野障害重症度を示すEsterman両眼開放視野で評価すると,視機能が悪いほど生活不自由度のスコアも非常に悪く,生活不自由度と視野障害重症度は比例していた.
 さらにわれわれは,左右眼の対応する検査点を比較して,優位なTD値を選択,合成してHFA 24-2と10-2の両眼加算視野を作成した.そしてそれぞれについて,各クラスターとQOLの項目との相関を検討した.
 HFA 24-2両眼加算視野のクラスター別平均TD値は-15~-18dBであったが,中心直下は-8.5dBと最も感度が残存していた.視野下半は上半に比べ生活不自由度と関連が深く,文字の読み書き,文章の読み書き,食事は中心直下と相関し,また自宅近所の歩行は全般的なクラスターで相関があった(図).

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