日本緑内障学会
第21回日本緑内障学会 シンポジウム2:緑内障治療効果の評価 治療における視野進行の判定
Frontiers in Glaucoma No.41, 40-41, 2011
視野検査データの解析方法
緑内障診療には,ハンフリー視野計などの自動視野計(standard automated perimetry:SAP)が一般的に用いられる.SAPによる早期診断,スクリーニングには限界があるが,鑑別診断や病期診断そして進行の評価においてはSAPの信頼性が高い.一方,早期診断には視神経乳頭の形状変化や網膜神経線維層の菲薄化を見ることができる画像解析装置が有用である.視野検査と画像検査にはそれぞれ長所・短所があるが,視野には標準的な視野計を用いることで,長期間,そして他施設でも経過観察が可能という大きな長所がある.短所として,自覚的検査であるため客観性や再現性において検査としての限界が指摘されている.視野障害は患者のQOV,QOLに直接影響するため,視野の進行評価により患者の視機能を予測できることも重要である.
視野検査データの解析方法(続き)
視野検査データの解析方法はトレンド解析とイベント解析に分けられる.トレンド解析には進行速度が計算できるという長所がある.イベント解析は進行を認めた時点を特定できるが,判定はベースラインに大きく依存する.臨床ではトレンド解析のほうが使いやすい場面が多いと思われる.
トレンド解析でも,回帰直線の傾きや回帰直線の統計学的有意性など,進行の定義は個別に決める必要がある.それによって判定結果が変わり,感度・特異度に影響を与える.また視野のどの部分で判定するかによっても感度・特異度は異なる.狭い範囲で評価をすればより感度の高い判定ができ,視野全体のMDなどで評価をすれば特異度が高くなる.1~2点の測定点ごとに評価するTD(total deviation)解析やPD(pattern deviation)解析では感度は高いが特異度はかなり低く,セクター解析は隣接した複数点の平均感度を解析することで判定能力が改善される.MD(mean deviation)slope法は視野全体の平均感度を解析し,セクター解析との感度・特異度の差は比較的小さかった.したがって,進行は局所で見ることも重要であるが,MDだけでも見逃しは多くはないと考えられる(図).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。