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日本緑内障学会

第21回日本緑内障学会 シンポジウム1:眼圧の基礎と臨床 眼圧測定の意義

千原悦夫

Frontiers in Glaucoma No.41, 38, 2011

眼圧測定値は正確か?
 これまでの緑内障の疫学調査から,眼圧と緑内障進行との強い関連が明らかにされている.EMGT(Early Manifest Glaucoma Trial)では眼圧が1mmHg下降させると緑内障性視神経委縮の進行リスクは10%低下させることができ,また,AGIS(Advanced Glaucoma Intervention Study)からは眼圧が常に18mmHg以下であれば視野進行を阻止できることが示されている.このように,あらためて指摘するまでもなく,患者の眼圧を把握しておくことは大切であり,1mmHgの眼圧差が重要な意味を持つ.

眼圧測定値は正確か?(続き)

 しかし,眼圧測定において,誤差のない市販の眼圧計は見当たらない.Imbert-Fickの法則を根拠とする圧平眼圧計は,現在まで50年以上に渡り,標準的な眼圧測定方法として使用されている.しかし,角膜厚には個体差があり角膜の弾性係数は一定ではないことや,屈折矯正手術後では眼圧測定値が非常に低くなるなどの問題点が認識されるようになってきた.
 弾性係数は眼圧によって変化するため補正をする必要があり,Orssengoらは1998年にその補正について調査し,測定誤差の要因について報告した.その中で,角膜厚は測定誤差に大いに関与するが,角膜曲率はほとんど関与しないこと,測定誤差は“割合(%)”で起こり絶対値ではないことを明らかにした.それでもなお,理論式で角膜の誤差をすべて解決できたわけではない.ヒトの角膜は球形ではなく,周辺ほど厚くなるなど角膜厚は一定でないため弾性係数も均一ではない.これらのことから,眼圧をより正確に補正するためには,finite modelが必要であるが,いまだに成功していない.
 もう一つの誤差要因としてtear filmがある.Schwartzらによるとtear filmは約4mmHgの力でプランジャを引っ張ることから,眼圧が低い場合には圧平眼圧計では測定値がマイナス値となり,実際の眼圧よりも低値を示す.なお,眼圧値が20mmHgに近づくと誤差はなくなるものの,それ以上になると過大評価される.

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