日本緑内障学会
第21回日本緑内障学会 データ解析委員会特別セッション 濾過胞感染調査2研究の現状
Frontiers in Glaucoma No.41, 36-37, 2011
1.濾過胞感染発生率と治療に関する多施設共同研究
濾過胞感染発生率と治療に関する多施設共同研究は,日本緑内障学会評議員の任意参加で,評議員所属施設で濾過手術を実施する症例のデータを5年間前向きに収集し,濾過胞感染発症の有無(発症率),および濾過胞感染発生時に重症度分類して規定の管理方針に添った治療を行った場合の有用性について検討を行う研究である.それにより,今後の濾過手術の適応,術後管理,濾過胞感染時の治療戦略などに関して指針作成に必要な基礎データを得ることを目的としている.2010年9月現在,経過観察期間終了(2012年3月31日)まで約1.5年となっている.
1.濾過胞感染発生率と治療に関する多施設共同研究(続き)
ここでは男性541例,女性367例(平均年齢63.2歳,レンジ16~88歳:平均術前眼圧25.4mmHg,レンジ10.0~70.6mmHg)を対象とした2.5年間の中間解析の結果を示す.なお,平均経過観察期間は39.2ヵ月で,最短12ヵ月,最長60ヵ月と観察期間を満了した例も含まれている.
その結果,濾過胞感染は15例15眼に認められた(ステージⅠ:7眼,ステージⅡ:4眼,ステージⅢa:1眼,ステージⅢb:3眼).カプランマイヤー法で求めた濾過胞感染発生率は,2010年7月現在,5年で1.8±0.5%であった(図1).
ただし,3年以上の症例はいまだに少なく,今後,各症例の経過観察期間が長くなるにつれ,発生率は上昇する可能性がある.また,濾過胞感染発症率を,円蓋部基底,輪部基底別の結膜フラップ作成法別でみるとそれぞれ1.7±0.7%と1.9±0.5%で,両群間に差はみられなかった.一方,術後の濾過胞漏出の有無でみると6.8±3.8%および1.5±0.4%と,濾過胞漏出ありのほうが有意に高かった.濾過胞漏出を認めれば早期に対応する必要があると思われた.
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。