日本緑内障学会
第21回日本緑内障学会 データ解析委員会特別セッション 多治見スタディ研究班報告
Frontiers in Glaucoma No.41, 30-31, 2011
多治見スタディは,2000~2001年に,日本緑内障学会が岐阜県多治見市に依頼して実施されたプロジェクト「Eye health care project in Tajimi」の主事業で,40歳以上の住民54,165名のうち無作為に抽出された4,000名から転出・死亡を除いた3,870名を対象とし,3,021名の参加者(受診率78.1%)を得た疫学調査である.「Eyehealth care project in Tajimi」では,副事業として,同時期に希望者14,779名を対象にした一般健診データ調査(Tajimi eye disease screening)も実施している.
いずれも個人情報入りのデータ(健診カルテ)は,多治見市の通常の健診カルテ保管期間(平成26年まで),多治見市保健センターで管理されている.そして,個人情報を外したデータが,日本緑内障学会データ解析センター多治見分室において管理されている.同データには,参加者のインフォームドコンセントに基づいて,日本緑内障学会会員のみアクセス可能となっている.
多治見スタディデータ(疫学データ)に関しては,データ解析委員会により指名された多治見スタディ研究班・研究者によって学会・論文発表がなされている.一方,一般健診データに関しては,データ解析委員会の研究者募集に応募し,データ使用許可を得たもの(第一次募集以降は随時許可)によって学会・論文発表がなされている.その際,①データは申請した研究以外への利用,二次利用,他者への譲渡の禁止,②許可を得た研究者が一定の期間を超えても論文化できない場合は後日,同一内容の研究を申請した研究者にもデータの使用許可,③学会・論文発表をした場合の日本緑内障学会へ報告義務,④学会発表・論文発表の中に,疫学データとの区別を明確に記載,などの条件が設けられている.
これまでに,疫学データについては,日本人における原発開放隅角緑内障(POAG)の有病率や全緑内障の有病率,危険因子,Low visionの原因および有病率,角膜厚と関連因子,眼圧に関連する眼および全身の因子,傍乳頭脈絡膜萎縮と乳頭立体形状の関係,視神経乳頭のレーザー走査画像診断,視神経乳頭出血の頻度,近視眼に対する共焦点走査型検眼鏡などが論文化された(表1).
今後,潜在患者や久米島スタディとの比較の論文化を図る予定となっている.一般健診データについては,視神経乳頭出血の検出率,緑内障スクリーニングとしての周辺前房深度計の有用性,健常日本人の角膜厚や眼圧の統計などが報告されている(表2).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。