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日本緑内障学会

第21回日本緑内障学会 学会を振り返って

田原昭彦

Frontiers in Glaucoma No.41, 28-29, 2011

 2010年9月24~26日の3日間,第21回日本緑内障学会が,『基礎と臨床の調和による緑内障への挑戦!!』をテーマに掲げて福岡で開催された.今回,学会長を務めた産業医科大学医学部眼科学教授の田原昭彦先生に,テーマに込めた思いをはじめ,学会運営の苦労話や,学会の様子,印象などを伺った.

 日本緑内障学会は誕生から20年が経ち,人に例えると成人を迎え,これからさらなる発展に向けて一歩を踏み出す時期です.そのことを踏まえ,今回の第21回日本緑内障学会のテーマを『基礎と臨床の調和による緑内障への挑戦!!』としました.なぜなら,いまだに御しきれない緑内障の克服に向けてのさらなる飛躍に,本学会が一助となればと考えたからです.

基礎研究と臨床研究,日常診療の調和をめざす

 緑内障は,有病率が予想以上に高いことが明らかにされ,最近,日本における中途失明原因の第1位になりました.また,現時点では,緑内障の視機能障害は不可逆的で,しかも,その確実な診断法,特に早期診断法や,永続的で安全な治療法は確立できていません.つまり,緑内障は克服できていないことが多く,われわれは挑戦していく立場にあるのです.ところが,近年の薬物療法の発展には目を見張るものがありますが,手術はさまざまな術式が提唱されてきたものの,結局,大きく分ければ切開術と切除術の2つが主流です.また,病態はいまなお不明な点が多く,さらに,視機能障害を停止させ,回復させる治療法も確立していません.そうしたことから,「緑内障分野は,研究も臨床もまだまだ」という指摘があります.
 ただし,そう言いつつも,基礎研究においては,房水動態や緑内障性視神経障害に関する形態学,生理学,薬理学,および分子生物学的な研究や遺伝子解析・遺伝子治療に関する研究,緑内障動物モデルを用いた研究は確実に進展しています.臨床研究においても,視野検査やOCTなどの画像装置など早期発見をめざした研究,視機能障害の進行や治療効果を客観的に評価する方法,慢性疾患である緑内障を確実にフォローしていく方法,およびインプラントをはじめとしたさまざまな手法を駆使した手術療法などに関する研究も進んでいます.
 おそらく,「あまり進歩していない」という声の背景には,ROCK阻害薬の緑内障治療への応用といったような基礎研究と臨床研究の調和が一部にみられるものの,それは限定的で,まだまだ緑内障領域では両者の結びつきがスムーズにいっていないところがあるためと感じています.今回の学会を主催するにあたり,進歩のみられる基礎研究・臨床研究をもう一度見直し,両者の調和を図りながら,緑内障克服をめざそうという考えが強くありました.そのような思いを込めて先に述べたテーマを掲げ,シンポジウムや教育講演などを企画しました.

APAO直後で運営に苦慮したが,参加者の熱意に感動

 学会運営の裏話をしますと,当初,本学会を9月16~19日に福岡国際会議場で行う予定にしていました.ところが,1年前になり中国北京でのAPAO(アジア太平洋眼科学会議)とAAO(米国眼科学会議)の合同会議が,ちょうどその時期に変更されました.そこで,急遽,会場などの調整を行い,9月23~25日にアクロス福岡で行うことにいたしました.さらに,APAOとAAOの合同会議からわずか1週間後ということもあって,たとえば,海外からの招待講演は,演者の移動の負担などのため行うことが難しく,シンポジウムの『アジアの緑内障疫学調査:そのポイントは?』で,韓国と中国の先生に発表をお願いするにとどまりました.本当は,シンガポールやベトナムからも発表をお願いし,アジア広域において国や地域で緑内障に差異がみられるのか,もし差異があるならば,その原因は何か(民族,食生活など)などを明らかにしたかったのですが,それができずに残念でした.また,急遽,決定した会場のアクロス福岡は,交通至便な場所ですが,ショッピングの中心地である天神は目と鼻の先で,横を流れる那珂川を渡れば飲食店が立ち並ぶ中州と,誘惑の多い場所でもあります.実は,内心,先生方が天神や中州に出かけられてしまい,聴講者が少なくなるのではないかと心配していました.
 ところが,APAO/AAO joint congressの直後にかかわらず,最終登録者数1,535名(うちコメディカル91名,学生30名)と,予想通りのご参加をいただき,学会開催中の2010年9月24日から26日の3日間,シンポジウム,特別講演,教育講演,須田記念講演,および一般演題,ポスターセッションいずれの会場においても,参加者の熱い討論が繰り広げられていました.しかも,朝8時前から開催されるモーニングセミナーや,夜19時過ぎまで開催されているイブニングセミナーにも,多くの先生方が参加され,熱心に講演を聞かれていました.なにより,通常であれば,参加者が少なくなる最終日の最後のセッションであったシンポジウム『緑内障薬物療法の科学』には,その前の須田記念講演に劣らぬ参加者数で,会場に溢れんばかりでした.
 学会終了後,本当に嬉しいことに,多くの先生から,「内容の充実した学会だった」と,お褒めの言葉をいただきました.なかでも,シンポジウム『補助材料(薬剤)を利用した緑内障手術』での羊膜移植やインプラントを利用した緑内障手術についての講演や,『緑内障薬物療法の科学』での乳幼児での眼圧上昇と薬物について,妊娠・授乳期の眼圧上昇とその管理についての講演は,参加者の注目度が高かったようです.さらに余談ですが,登録参加者に配布した参加証用のネームプレートや学会バックも好評で,「ネームプレートを自院で使用している」という先生もいたり,台湾の学会で,本学会のバックを持ってきている先生をみかけたりしました.何を隠そう,私も学会バックをよく利用している1人です.
振り返ってみて,学会の運営上,苦労することもありましたが,当初,本学会がめざしていた基礎と臨床の架け橋になるという目標は達成できたと自負しています.ここに日本緑内障学会理事長の新家眞先生をはじめ,評議員ならびに会員の皆さま,また多数のご支援をいただいた福岡県眼科医会,産業医科大学眼科同門会をはじめとする先生方に深く感謝いたします.

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