はじめに
多治見スタディによると日本人の40歳以上における原発開放隅角緑内障の有病率は0.3%,正常眼圧緑内障(NTG)は3.6%であり,広義開放隅角緑内障にNTGが占める割合は91.8%と非常に高い.CNTGS(Collaborative Normal Tension Glaucoma Study)では眼圧がベースラインから30%の眼圧下降群が無治療群より有意に視野進行率が低くなる一方,眼圧下降を達成できた20%が視野の進行を認めた.また,逆に無治療で経過したNTGでも約半数が5年間に視野の進行は認められなかった.眼圧が正常にコントロールされているにもかかわらず緑内障性視神経障害が進行する症例が存在することは眼圧依存性と非依存性の要素が関与していることが考えられる.一方,緑内障では機能的な視野障害に先立つ構造的な神経変性視神経症として捉えられるようになってきている.近年,構造的な解析の発展としてOCT,特に解像度,スキャン速度の優れたスペクトラルドメインOCT(spectral domain optical coherence tomography:SD-OCT)が登場した.また,視野解析ではさまざまな網膜神経節細胞の機能選択的測定法(short-wavelength automated perimetry:SWAP,frequency doubling technology perimetry:FDTなど)が登場した.しかし,長期経過観察する上でスタンダードな方法は依然としてHumphrey視野計に代表されるSAP(standard automated perimetry)であり,進行評価の判定に用いられる.本稿では,最近2年間の文献をもとにNTGの病態について構造と機能の観点から解説する.
全文記事
Summing Up(Frontiers in Glaucoma)
緑内障の病態
掲載誌
Frontiers in Glaucoma
No.41 18-26,
2011
著者名
中谷雄介
記事体裁
連載
/
全文記事
疾患領域
眼疾患
診療科目
眼科
媒体
Frontiers in Glaucoma
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。