目で見るシリーズ 続・読影シリーズ
第2回 早期緑内障
Frontiers in Glaucoma No.41, 1-5, 2011
Question
早期緑内障眼の視神経乳頭診察のポイントを教えてください
Answer
緑内障の早期発見において視神経乳頭の緑内障性変化を詳細に観察し,正確に評価することは大変重要である.しかしながら,早期緑内障例においては乳頭変化が比較的軽微な症例も多くみられ,微細な変化を見逃さないように基本的なポイントを押さえておくことが必要である.緑内障眼の乳頭所見の代表的なものには質的判定項目として以下のものがあげられる.
Answer(続き)
①乳頭変化を評価する場合,乳頭の大きさ(大乳頭,小乳頭)に注意して判断する.
②陥凹の形状に注目する.陥凹の拡大は視神経乳頭に認められる緑内障変化の最大の特徴の1つと考えられる.陥凹観察において最も重要なことは陥凹縁を正確に認識することである.蒼白部の色調をもとに陥凹縁を決定すると陥凹を過小評価してしまうことがあるため,特に二次元的観察をする場合には乳頭内の血管走行に注目して判断することである.網膜血管は陥凹壁に沿って走行し陥凹縁で走行が変化する.この屈曲してみえる部分を陥凹縁と判断することが重要である.また,より正確に判断するためには三次元的に立体的観察をすることで,より正確な陥凹縁の決定,陥凹の拡大の有無が判断できる.
③リムの形状に注目する.陥凹の拡大に伴い上極,下極,または両方向に陥凹が拡大してゆき同部位においてリムの菲薄化が生じ,さらに進行すると局所的な菲薄化,いわゆるノッチングが生じる.ノッチングのある部位には神経線維層欠損(NFLD)が存在することが示唆される.
④乳頭周囲所見に注目する.乳頭出血は健常者では稀で繰り返して生じる場合は視野の進行に注意を要する.また,出血部位付近にノッチングやNFLDが存在することが多いとされている.乳頭周囲網脈絡膜委縮(PPA)や網膜神経線維層欠損も重要な所見である.
図1aは健康診断で右眼の乳頭異常を指摘された65歳男性の視神経乳頭であり,矯正視力は1.0,眼軸長23.7mm,等価球面度数は+1.5ジオプトリーである.乳頭周囲をみてみると,明らかなNFLDは認められずPPAは乳頭耳側に均一に存在しており,乳頭出血も認めない.乳頭内に着目すると,全体の色調からは一見全周にリムが存在しているようにもみえる.しかしながら,緑内障の初期変化が生じやすい上極,下極に注目して血管の屈曲点をもとに陥凹縁を判断すると,まずは下耳側の血管が明らかに銃剣状に屈曲しており,いわゆるbayonetingと呼ばれる所見を呈していることがわかる.蒼白部もよくみるとこの方向に拡大傾向を呈しており,この部分のリムが明らかに菲薄化していることが想定される.また上極に注目すると,リムの色調からはリムは十分に存在しているようにもみえるが,血管走行に注目してみると,ここにもbayonetingが存在していることがわかる.しかしながら平面的な写真ではこの部位のリムの変化はわかりにくい.
一方,図1bに示したステレオ写真にて立体的に観察すると,この部位のリムも菲薄化していることがわかる.
ハンフリー視野検査(図1c)では,明らかなリムの菲薄化を認めた乳頭下耳側に対応する上方視野に暗点が生じていることがわかる.また,平面写真ではわかりづらかった乳頭上耳側に対応する下方視野に極初期と思われる視野異常(鼻側階段)も認めていることがわかる.
症例1
症例1は66歳男性.健康診断にて視神経乳頭異常を指摘され眼科を受診した.視力は矯正1.0,眼圧は10台半ばで開放隅角,屈折は等価球面値で-2.5ジオプトリーである.一見C/D比は大きくなくリムは全周に存在しているようにもみえるが,乳頭下方に注目すると5時方向で血管の屈曲が大きく変化しておりこの方向にPPAも観察される.さらにこの部位には小さな乳頭出血も認められ,この部位にノッチングが形成されていることがわかる(図2a矢印).
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。