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症例から学ぶ

併存症が問題となるCOPD症例

福地義之助

International Review of Asthma & COPD Vol.13 No.3, 29-33, 2011

はじめに
 COPD(慢性閉塞性肺疾患:chronic obstructive pulmonary disease)は全身性炎症であるとする考え方が提唱されてから,肺以外の他臓器疾患のリスクの大きいことが注目されている1).このような肺外臓器疾患が,進行した肺炎症が全身にこぼれ出した結果なのか,それとも肺炎症と同時進行性に発症したものなのかについては現在のところ確定していない.併存症の定義は通常の合併症と異なり,他の臓器病変がCOPDの罹患によって偶然に合併するリスクを超えて見出される場合に用いられる.併存症が注目されているのは,COPD本来の治療に加えて併存症に必要な治療を加える必要があるためであり,またその発症メカニズムの検討がCOPDそのものの発症病理の解明に役立つことによる.
 ここでは,COPDに動脈硬化症に伴う不整脈と腹部大動脈瘤,睡眠呼吸障害,喉頭癌,痛風など多様な肺外臓器疾患を伴った症例を提示する.

症例

患者
 69歳男性,2007年6月初診.
主訴
 階段昇降時,山登りでの息切れ.
現病歴
 1年前から上記の息切れを自覚したが,最近はやや症状が強くなった.前年に他病院で人間ドック検査を受けた際に胸部CTを撮り,肺気腫があると言われた.咳と痰は少なく,感冒時に膿性痰が数日間出る程度である.新聞でCOPDに関する記事を見て精査を希望して受診した.
既往歴
 67歳で心臓不整脈のため心臓カテーテルアブレーションで治療し再発なし.
 痛風:62歳で発症し,3回の急性関節炎発作があり高尿酸血症の加療中.
 喫煙歴:10代で喫煙を始め平均1日30~40本で45年間喫煙して5年前に止めた(喫煙指数:1400以上).
家族歴
 気管支喘息,糖尿病,高血圧,痛風などの負荷はない.
身体所見
 意識・言語清明,嗄声(-),身長175cm,体重70kg.
 発熱(-),脈拍90/分整,呼吸数20/分,血圧116/78 mmHg(左上腕,座位).
 胸部:胸郭形状の異常なし.Hoover sign(-),肺;打診:正常;聴診:wheeze(-),crackles(-).
 心臓:濁音界:正常;心音:正常.
 腹部:epigastric bruit(-),触診:特に異常なし.
 四肢:関節腫脹(-),バチ指(-),下肢の浮腫(-).
 息切れ:MRCⅡ度.
検査所見
 WBC 7800/mm3,RBC 471×104/mm3,Hb 14.1g/dL,Ht 43.8%,Plt 20.3×104/mm3,ALP 207IU/L,AST 22IU/L,ALT 23IU/L,LDH 167IU/L,総ビリルビン0.51mg/dL,TP 7.5g/dL,Alb 4.1g/dL,尿酸8.3mg/dL,TChol 165mg/dL,HDL Chol 37mg/dL,CRP 0.1mg/mL,BNP 16.0pg/mL,SP-D 83.2ng/mL.
 高尿酸血症とHDLコレステロールの低下のほかは正常所見であった.
 胸部X線写真:肺野の全般的透過性亢進(-),横隔膜平低化(-),心胸郭比:正常(図1).

 胸部CT写真:両肺野に低吸収領域(low attenuation area;LAA)が散在している.
 Goddard分類:Ⅱ/Ⅳ,腫瘤陰影(-),間質性陰影(-)(図2A,2B).

 心電図:正常調律で異常所見なし.
肺機能検査成績
 軽度の閉塞性換気障害,気道抵抗の増大,肺過膨張,肺拡散能の低下(表).

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