<< 一覧に戻る

症例から学ぶ

冬場に増悪や肺炎を繰り返す気管支喘息の一例

平田一人

International Review of Asthma & COPD Vol.13 No.2, 29-31, 2011

はじめに
 気管支喘息(喘息)患者では,冬場に感冒など上気道感染を契機に増悪がよく経験され,ウイルス感染により誘導される自然免疫によるTh1タイプの炎症反応とともに,thymic stromal lymphopoietin(TSLP)の産生などを介したTh2タイプの炎症反応も引き起こすことが知られている.また治療面からも長時間作用性b2刺激薬(long-acting β2 agonist;LABA)および吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid;ICS)などは,それぞれ単独でもウイルス感染の予防効果,感染後の炎症反応に対する抑制効果を示し,ICS/LABA配合剤ではさらに相乗的に抑制することも示されている.今回,十分な抗喘息薬による治療にもかかわらず,冬場に繰り返し増悪や肺炎がみられた喘息症例で気管気管支骨軟骨形成症を合併した1例を経験し,3年間の臨床経過も含め述べることにする.

症例

【患者】58歳女性
【既往歴】声帯ポリープで手術(38歳)
【家族歴】弟:気管支喘息
【喫煙歴】なし
【主訴】繰り返す肺炎の精査
【病歴】43歳頃から喘息が出現し,近医でICS・気管支拡張薬による治療で安定していた.50歳頃から特に冬場(12~2月)に繰り返し喘息の増悪がみられ,57歳時には右上肺野に肺炎を合併し,抗菌薬にて軽快した.58歳時にも12月に39℃の発熱,咳,膿性痰,喘息の増悪が出現したため,近医受診し,胸部X線写真上右上肺野の肺炎を指摘され,右上肺野に肺炎を繰り返すため,精査目的で当科に紹介された.
【所見】
 身体所見では,貧血・黄疸なく,血圧も正常,胸部でも心音には異常なく,肺野にラ音は聴取せず.腹部や四肢や神経学にも異常なく,リンパ節腫脹も認めなかった.
 検査所見では,一般血液でWBC 6300/μLと正常であったが,CRP 6.0mg/dL,血沈(1時間値)108mmと著明な炎症反応を示した.喀痰検査では,一般細菌でP. aeruginosa(1+),H. parainfluenzae(2+)がみられたが,細胞診や結核菌・非結核性抗酸菌は共に陰性で,マイコプラズマ抗体やクラミジア抗体も陰性で,腫瘍マーカーも陰性であった.アレルギー検査では,血清総IgEは405IU/mLと高値を示したが,通常抗原に対する特異的なIgEや皮膚反応はすべて陰性であった.動脈血ガス分析では,PaO2 72 torrと軽度の低酸素血症を認めた.
 安定期に測定した肺機能検査では,%肺活量は115.2%と正常であったが,1秒率は55.8%と閉塞性換気障害を認め,%機能残気量119.4%,残気率41.8%と残気量の増加も認めた.気管支拡張薬による反応性は26.9%と440mLで可逆性があり(図1),気道過敏性は1250μg/mLと気道過敏性の亢進を認めた.

 画像所見では,右上肺野に浸潤陰影を認めた(図2)が,気管・左右主気管支の透亮像には狭窄などの異常はなく,リンパ節腫脹も認めなかった.

胸部CTでは,右B2の入口部には狭窄はなかったが,右S2末梢の容量減少と内部に気管支含気像を伴う肺炎陰影を認めた.
 以上の諸検査から閉塞性肺炎が考えられ,肺癌などを否定するため,気管支鏡検査を施行した.気管には黄白色の結節状隆起病変が多発性に,膜様部を除き気管支壁に認められた(図3).

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る