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The Front Line(研究会/施設紹介インタビュー)

呼吸リハビリテーション普及を担う理学療法士の育成

千住秀明

International Review of Asthma & COPD Vol.13 No.1, 39-43, 2011

 呼吸器疾患治療における呼吸リハビリテーションの重要性をいち早く認識し,長崎大学大学院で20年以上前から理学療法士(physical therapist;PT)育成に携わるかたわら,各地で公開講座を主催するなど,呼吸リハビリテーションの普及に尽力してきた,同大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座教授の千住秀明先生に,PT という視点から呼吸リハビリテーションについてお話しいただいた.

日本における呼吸リハビリテーションの導入

─千住先生ご自身がかかわられたきっかけは.
千住 1970年代後半に国立療養所近畿中央病院(現・国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)附属リハビリテーション学院で教官として働いていました.当時の理学療法士教育の主な対象疾患は片麻痺や骨折の患者さんでしたが,同病院はもともと結核療養所でしたから,患者さんは呼吸器障害があり,この基礎疾患の問題を解決しないと,片麻痺の理学療法に進めない状態でした.それがきっかけですね.
─呼吸リハビリテーションが導入される以前の状況はどのようでしたか.

千住 1985年に在宅酸素療法が医療保険の適応になり,呼吸リハビリテーションへの関心は高まりましたが,当時の対象患者は結核後遺症の患者が中心で,在宅酸素療法と比べ普及しませんでした.在宅酸素療法の保険適応を受け在宅に帰れても,息切れのために歩行などの能力障害が生じて,日常生活動作(activities of daily living;ADL)が制限され,社会参加ができない在宅患者が増加していました.この在宅酸素療法も呼吸リハビリテーションの構成要素の1つであるという考えが取り入れられるようになり,患者さんのADLやQOL(quality of life)を向上することができる呼吸リハビリテーションが再認識されるようになりました.
 当時は「呼吸リハビリテーション」ではなく,「肺機能療法」と呼ばれ,ほかの疾患に比べ著しく低い診療報酬でした.呼吸リハビリテーションの診療報酬が認められたのは2006年です.
─2001年に「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」が作成されました.先生もワーキンググループに加わっておられました.
千住 診療報酬として認められるには,きちんとしたエビデンスがあり,全国津々浦々にその治療法が確立していること,対費用効果があることなどが重要となります.海外ではすでに十分なエビデンスがあった呼吸リハビリテーションですが,日本でもそのことを周知させる必要がありました.日本呼吸器学会と日本呼吸器管理学会(現・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会)は,会員にその知識と技術を広めるため,ステートメントを作成しました.さらに患者会からの希望もあって,運動療法マニュアルや患者教育マニュアルも作られました.それが普及して,患者さんからも呼吸リハビリテーションを要望する声が高まり,呼吸リハビリテーション料の新設(診療報酬の改定)が認められました.ようやく呼吸不全の患者さんにリハビリテーションが実施できる経済的な裏付けができあがってきたのです.

ADLの自立を目指す呼吸リハビリテーション

─どのような患者さんが対象となるのでしょうか.
千住 息切れ症状のある慢性呼吸器疾患で,標準的な治療で症状が安定している患者さんです.年齢や重症度による基準はありません.術後の患者さんも対象になります.呼吸リハビリテーションは,こういった患者さん自身が,自立できるように支援する医療です(図1).

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