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症例から学ぶ

トリコフィトンの職業性曝露が増悪の原因と考えられた咳喘息の一例

中込一之永田真

International Review of Asthma & COPD Vol.13 No.1, 27-30, 2011

はじめに
 白癬は,皮膚糸状菌によって生じる皮膚感染症である.トリコフィトンは白癬の原因菌の一つであり,気管支喘息の原因となることは以前より報告されていたが1-4),今まではとくに,白癬患者における喘息発症および増悪における関与が指摘されてきた.例えば,Wardらは,白癬を合併した重症喘息患者で,かつトリコフィトン抽出液に対する皮膚反応陽性の10人に対し,トリコフィトン抽出液で気管支誘発反応を行ったところ,陽性反応を示し,トリコフィトンが白癬患者の喘息病態に強く関与することを報告した1).さらに白癬を合併した喘息患者11人にフルコナゾールを内服させたところ,皮膚症状だけでなく,トリコフィトンに対する気管支誘発反応も軽減したことを報告した2).したがって白癬合併喘息患者においては,トリコフィトン感作の可能性を念頭に置くことが日常診療で重要と考えられてきた.
 しかし,白癬非合併患者において,トリコフィトンがどのように喘息病態にかかわっているかは明らかでない.今回われわれは,トリコフィトンへの職業性曝露が増悪に関与したと考えられた咳喘息の一例を経験したのでここに報告する.

症例

【症例】60歳台前半,男性
【主訴】咳嗽
【現病歴】2005年ごろより咳嗽を時々認めていた.2008年5月ごろより朝方の咳嗽の悪化を認めたため,6月上旬当院アレルギーセンターを受診した.
【既往歴】小児喘息(臨床的には寛解),高血圧
【家族歴】特記事項なし
【生活歴】喫煙なし,ペットなし,職業・接骨医
【初診時身体所見】
意識清明,体温36.2℃,血圧128/60mmHg,脈拍66/分,動脈血酸素飽和度98%.心音純,呼吸音清.皮膚所見なし.
【検査所見】
血算・生化学検査:正常範囲内(表1).

胸部エックス線:肺野に異常を認めない.
ピークフロー値:523L/分(予測値563L/分).
呼吸機能検査:VC 3,820mL(110.6%),FEV1 3,110mL(83.9%)
気道過敏性検査(アストグラフ法):陽性(Dmin 5,286 Unit, Cmin 3,125μg/mL)
【経過】咳喘息と診断.職業は接骨医であり,詳細な問診で,白癬病変のある患者との接触によって咳が悪化することがわかった.RAST(radio allergosorbent test)にてトリコフィトン単独陽性(表1).休日の咳の頻度は少なかった.以上より,トリコフィトンの職業性曝露による咳喘息の増悪が考えられた.吸入ステロイド治療と,マスク装着などのトリコフィトン回避指導にて,咳の改善を認めた.

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