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誌上ディベート

肝癌に対する腹腔鏡下手術 両論文に対するコメント

門田守人

Frontiers in Gastroenterology Vol.19 No.2, 31, 2014

日本内視鏡外科学会の第11回アンケート調査集計結果報告によると, 肝疾患に対して内視鏡外科手術が始まったのは1992年からで, 2011年12月末までの総症例数は6,896例となっている. そのうち疾患別では肝細胞癌が4,080例(59%)と最も多く, 転移性腫瘍が1,079例(16%)であったと報告されている. これを術式別で見ると肝切除術が4,262例(54%)と最も多いが, 肝細胞癌切除症例は3,000例程度ではないかと推測されている. 開腹手術と比較して必ずしも多い症例数とは言えないまでも, 確実に増加していることは事実である. 肝細胞癌に対する肝切除術を腹腔鏡下手術の適応としてどう考えるかが今回のテーマである. この問題は日本だけの問題ではなく国際的なテーマでもある. 2008年に米国でコンセンサス・カンファレンスが開催され, 現時点では単発5cm以下でsegment2-6の腹側・下領域あるいは左外側区域の切除を適応と考えるべきで, これを超える手術は切除術は可能であるが, 現時点では経験豊富な外科医に限定するべきであろうと述べられている. 今後の課題は, 効果と安全性についてやはりprospective randomized trialで優位性ないしは同等性の証明が必要である. この点については言うまでもなく, 両論文でも同意見である. 筆者の意見として, あえて申し述べたいと思うことは, 医療の発展には, 常に挑戦的な姿勢は必要で, これがなければ進歩はないと言っても過言ではあるまい. しかし, 一方で, どこまでの進歩が真に患者に対して, あるいは社会に対して効果的であるのかという面も忘れてはなるまい. あまり好きな言葉ではないが, 最近の医療費高騰に対してコストパフォーマンス, あるいはタイムパフォーマンスなどと言われることも常に念頭に置いて, 今後の新しい医療の開発を考える必要がある.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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