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ディベート座談会(DEBATE SYMPOSIUM)

現時点で,医学部新設は医療問題を解決するか

門田守人北島政樹小川彰

Frontiers in Gastroenterology Vol.17 No.3, 38-44, 2012

主に地方でみられる深刻な医師不足への対応策のために,また時代の要請に応じた医師の育成のために,医学部新設が話題になっています。一方で,すでに1学年1,300人以上の医学部定員増が行われており,医学部新設は必要ないのではという考え方もあります。本座談会では北島先生と小川先生に,それぞれの立場からディスカッションしていただきました。

※この記事へのご意見を募集しております。

【出席者】
がん研究会有明病院 院長
門田 守人 Morito Monden(司会)

岩手医科大学 理事長・学長
小川 彰 Akira Ogawa

国際医療福祉大学 学長
北島 政樹 Masaki Kitajima

現在,医師はどのように不足しているのか

門田――最近,医師不足・医療崩壊への対策として医学部新設が非常に話題になっていますが,賛成・反対両方の意見が聞かれます。本日は,国際医療福祉大学学長の北島政樹先生と,岩手医科大学学長の小川彰先生にお越しいただきましたので,医学部新設の問題を正しく考えていくにはどのような理解が必要なのか,読者の方々のための材料を提供できるような座談会にしたいと思います。
 私も以前日本外科学会会長のときに「外科学会入会者はどんどん減っており,このままでは2015年には新しい外科医はゼロになる」という話をしましたが,全体の医師数は,年々新しい卒業生が出て増えていることに間違いないのに,この10年近く「医師不足」といろいろなところで騒がれるようになりました。
 医学部新設も医師不足という文脈のなかから出てきた話ですが,この「医師不足」というのは,外科が少ないといった診療科間の格差とか,さらに医療の内容が非常に細分化されてきているからだとか,地域格差だとかいろんなことが関係しています。一体この医師不足というのは,どのように捉えればよいのでしょうか。

北島――医師不足を論じるにも,医師数の統計のきちんとした基準がないことが問題だと思います。OECD諸国における人口1,000人に対する医師数の国際比較がよく用いられるわけですが(図1),日本は34ヵ国中,下から数えて5番目です。

しかし,①臨床医師数,②就業医師数(臨床医以外も含む),③医師免許を有する人数(就業していなくても),の3つの場合がこのOECDのデータには入っています。日本の場合,臨床医師数が2.15人で,OECD加盟30ヵ国中27位です。OECD平均は3.24人で,日本は2.15人なので,数の上では不足しているのではないかと思われます。
 しかし,人数だけでは,医師不足は論じられないと思います。医師の労働時間とか,ベッド数とか病院数とかも各国間では全く異なります。そういうことも考慮に入れなければなりません。それから,門田先生が先ほど外科医が減ったとおっしゃいましたが,医師不足・医療崩壊の原因の1つは医師の診療科の偏在なのです。よく言われるように,若い医師は外科医になって大きなリスクを負いたくないのだと思います。
 ですから,現実に医師の数だけでは物事を議論できないと私は思います。

小川――医師の数の問題に関しては,北島先生と基本的には同じような意見です。OECDやG7の平均と比べても,日本の医師数は少ないということはいえると思います。
 しかし,問題なのは,やはり東京が10万人当たりの医師数が一番多くて,都道府県別にみて地域偏在が非常に大きい。さらに,北海道などの医師不足の県においても,都市には多くて郡部には少ないという地域偏在と,先程門田先生のご指摘の診療間偏在が医師不足に拍車をかけているということは,明らかな事実だと思います。
 もう1つは,たとえば,岩手県は大体四国4県に匹敵するぐらいの広さのなかに9つの二次医療圏があり,そのなかに宮古医療圏というのがあります。宮古医療圏は,東京とほとんど同じ広さです。そこに総合病院が1つしかない。ということは,そこに患者さんが集中せざるを得ないのです。したがって患者さんのたらい回しは患者さんの死に直結しますからたらい回しはありません。すなわち,たらい回しをするほど病院がないということだろうと思うのです。
 それに比べますと,大都会において病病連携・病診連携がきっちりしていないなかで,医師数だけをどんどん吸収しているということが問題の本質のなかにはあるのではないかと私は思っています。

北島――それは私も大賛成です。大病院と中堅病院,それから病院と開業医との機能連携をすれば,少ない医師数でも維持できるはずなのです。そういう機能連携がされていない。それから,40~50歳代で開業された方は,みなさん専門医を取得していますから,その機能を集約すれば,もっと変わるのですが,それが実行されていません。先生がおっしゃったとおり,そこが医師不足がひどくなっている非常に大きなポイントだと思います。


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