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誌上ディベート

ソラフェニブは肝癌治療の新しいパラダイムか?

金井文彦椎名秀一朗浅岡良成中川勇人近藤祐嗣建石良介五藤忠小俣政男

Frontiers in Gastroenterology Vol.16 No.1, 17-33, 2011

新しいパラダイムと考える立場から 
はじめに
 肝細胞癌は,手術・経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)・肝動脈塞栓療法(TACE)が肝内病変の治療に有効である一方,遠隔転移・血管内浸潤・胆管浸潤を来すと予後不良であり,発癌抑止とともに進行例には有効な全身化学療法の開発が望まれていた。

 海外で実施された第Ⅲ相ランダム化比較試験1)2)で,ソラフェニブは全身化学療法として肝細胞癌の生命予後を改善することが初めて示された。2009年5月20日,わが国でも分子標的薬ソラフェニブが「切除不能な肝細胞癌」を適応症として認可された。
 本稿では,今まで行われたソラフェニブの臨床試験成績,わが国の特定使用成績調査の結果およびアルゴリズムにおけるソラフェニブの位置づけを解説し,本剤の肝癌治療におけるインパクトについて考えを述べたい。

新しいパラダイムと考える立場から(続き)

臨床試験の成績
1.SHARP 試験1)
 2005年3月より肝細胞癌を対象とした第Ⅲ相臨床試験が,無作為化プラセボ対照二重盲検試験として多施設共同で実施された。本試験は,進行肝細胞癌に対するソラフェニブ400mg1日2回連日投与の有効性と安全性について検討することを目的とし,対象は全身化学療法の治療歴のない進行肝細胞癌患者で,肝機能はChild-Pugh Aまで。試験デザインは,ソラフェニブ群とプラセボ群の2群。主要評価項目は全生存期間(OS:overall survival)と臨床症状悪化までの期間(TTSP:time to symptomatic progression)であり,副次的評価項目は無増悪期間(TTP:time to progression)と病勢コントロール率(disease control rate:DCR(CR+PR+SD))であった。602名がソラフェニブ群299名とプラセボ群303名にランダムに割り付けられた。両群の患者背景に差はなかった。中間解析の結果,全生存期間の中央値は,ソラフェニブ群が10.7ヵ月,プラセボ群が7.9ヵ月であり(p<0.001),32%の危険率の低下が認められた(図1)。

TTPはソラフェニブ群5.5ヵ月,プラセボ群2.8ヵ月であり(p<0.001),73%のTTP延長と42%の危険率の低下が認められた。TTSPに有意差は認められなかった。DCRはソラフェニブ群が43%,プラセボ群が32%(p=0.002)であった。この成績に基づき,欧米では2007年6月に承認申請を行い,欧州では2007年10月に「肝細胞癌」の適応で,米国では11月に「根治切除不応の肝細胞癌」で適応を取得した。

2.Asia-Pacific 試験2)
 日本を除くアジア太平洋地域で行なわれた,肝細胞癌患者(Child-Pugh Aまで)を対象としたプラセボ対照ランダム化二重盲験比較試験においても同様に,ソラフェニブはOS(6.5vs4.2,HR=0.68,p=0.014)とTTP(2.8vs1.4,HR=0.58,p=0.0005)を延長した(図2)。

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