Summary  われわれは,これまで,潰瘍学,特に粘膜防御機構,粘膜損傷・修復のメカニズム,潰瘍治癒の質およびよりよい潰瘍治療の方法について主に研究してきた。プロトンポンプ阻害薬やHelicobacter pylori除菌療法の適応により,胃・十二指腸潰瘍の治療は確立されたかのようにみえたが,まだまだ不明な点が山積されている。それらは,ガイドラインの作成により露呈してきた。潰瘍治癒に及ぼす除菌療法の役割,NSAIDs起因性胃・十二指腸潰瘍の予防と治療などにおいて,日本人を対象とした成績が不足している。これらの点について1つ1つ明らかにしていかなければならない。さらに,カプセル内視鏡などの臨床応用の結果,小腸にも潰瘍性病変が多く発生していることも報告されるようになり,今後,食道から小腸・大腸にいたるすべての消化管を対象にした日本人に適した潰瘍治療を確立する必要性がある。このような観点からもまだまだ潰瘍学は興味深く,若手の研究者の活躍を期待したい。