知って得するワンポイントアドバイス
ボトックスの適応と実際の効果
脳と循環 Vol.16 No.3, 62-64, 2011
はじめに
脳卒中後の痙縮を伴う上下肢の麻痺は,脳卒中患者の機能障害を惹き起こすとともに,更衣や歩行などのADLを低下させたり,患者の姿勢やコスメティックな面にも悪影響を及ぼすため,適切な治療が必要となる.2010年10月にボトックスの上肢および下肢の痙縮に対する使用が追加承認され,脳卒中患者の上下肢筋緊張コントロールに新たな治療手段が加わった.本稿では,ボトックスを用いた脳卒中患者の上下肢筋緊張亢進に対する治療の適応,その効果および注意点について述べる.
脳卒中の痙縮に対するボトックスの適応
上下肢の痙縮の治療には一般的に抗痙縮薬の経口投与を行うが,経口投与薬でコントロール困難な強い痙縮を局所的に軽減させることで,患者や介護者のメリットになる場合にボトックスの筋注が適応となる1).具体的には,痙縮の軽減で局所的な疼痛や違和感の改善が図れたり,関節可動域拡大による運動機能の改善や介護量の軽減が望めたり,肢位のコスメティックな問題が改善されると考えられる場合にボトックスが使用される.
しかし,ボトックスの効果で脱力が生じて患者の能力が低下することがあるので,使用に際しては十分に注意が必要である.
ボトックスの投与部位
脳卒中の痙縮でしばしば認められる四肢の変形と主な関与筋を表1に示す.
肢位や関節可動域の改善のために,どの筋にボトックスを投与すべきかは,患者の症状や訴えを十分に把握した上で決定する必要がある.
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。