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抗凝固療法 Update

新規抗凝固薬

内山真一郎

脳と循環 Vol.16 No.3, 39-44, 2011

SUMMARY
 直接的トロンビン阻害薬やXa因子阻害薬はワルファリンと異なり,血液凝固モニターやビタミンK 摂取制限が必要ない.高リスクの心房細動患者において行われたトロンビン阻害薬ダビガトランとワルファリンとの比較試験により,ダビガトランのワルファリンと同等以上の有効性と安全性が示され,発売された.Xa因子阻害薬もリバロキサバンとワルファリンとの比較試験が終了し,アピキサバンとエドキサバンの比較試験も行われた.

KEY WORDS
atrial fibrillation/stroke prevention/direct thrombin inhibitor/factor Xa inhibitor/clinical trial

はじめに

 急激な高齢化社会の進行に伴って,心房細動による脳塞栓症が増加している.心房細動患者の脳塞栓症予防には抗凝固療法の適応があるが,わが国では経口投与可能な唯一の抗凝固薬としてワルファリンが60年以上もの間用いられてきた.しかしながら,ワルファリンには血液凝固モニター,ビタミンK摂取制限,他剤との相互作用のチェックの必要性などの不便さがあり,脳出血への危惧と相まって,本来適応となるべき症例に投与されないことも多かった.最近,これらのワルファリン使用上の煩雑さをすべて解消する経口投与可能な抗凝固薬として選択的トロンビン阻害薬やXa因子阻害薬が次々と開発され,心房細動患者を対象として大規模なワルファリンとの比較試験が行われている.その中で最も先行していた直接的トロンビン阻害薬ダビガトランの臨床試験成績が発表され,最近日本でも保険適用が承認され,大きな注目を集めている.また,複数のXa因子阻害薬の臨床試験も行われており,リバロキサバンの試験成績が発表された.

新規抗凝固薬の作用機序

 ワルファリンはビタミンK依存性の凝固因子の合成を抑制することによりトロンビンの生成を抑制する間接的トロンビン阻害薬であり,その肝臓でのCYP代謝が遺伝子の制御下にあるため効果に個人差が大きく,食事や薬剤の影響を受けやすく,治療域が狭いため,ビタミンK摂取制限,他剤との相互作用のチェック,時間と経費を要する血液凝固モニターが必要となる.これに対し,新規抗凝固薬は血液凝固カスケード発生の阻害,凝固進展阻止によるトロンビン生成の抑制やトロンビン阻害によるフィブリン形成の抑制といった,血液凝固の特異的な段階に作用する血液凝固因子に選択的に作用して,その機能を阻害する分子標的薬であることから,用量反応性に優れ,抗凝固活性の個人差が少なく,ビタミンK摂取制限の必要がなく,薬物相互作用がほとんどなく,血液凝固モニターを必要としない(図1)1)2).

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