はじめに  くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は脳卒中の約1割を占める.脳動脈瘤破裂に伴うものは年間10万人当たり約20人が発症するとされる1).このうち10~20%は発作直後に死亡し,入院後に死亡ないし重篤な後遺症を残すものが20~25%とされ,社会復帰が可能となるのは3割程度である.予後の大部分は出血の重症度に依存するため,軽症であれば社会復帰につながる可能性が高くなる.しかし,軽症であればあるほど初診時には所見が乏しく,診断に苦慮してしまう症例が散見される2)-4).実際,米国では12%のSAHが同定できなかったという報告もある5).こうした見落としを防ぐためには,症状などに頭痛の起こり方を十分に聴取することが重要である.次いで,頭部CTを十分に読影することである.それでも診断がつかない場合には腰椎穿刺が考慮されるが,侵襲的であるため近年ではMRI稼動施設の増加に伴い,CTの次にMRIを施行することも増えてきている.