他科専門医からみた脳卒中
急性めまいと脳卒中―神経耳科の立場から
Acute Vertigo and Stroke─Its Neurotological Investigations
脳と循環 Vol.16 No.2, 45-48, 2011
SUMMARY
急性めまいの診断で最も重要なことは,末梢性疾患と中枢性疾患との鑑別である.小脳梗塞症の中でも,特に後下小脳動脈領域の下部小脳梗塞では,めまいと嘔気のみの症状で,いわゆる「isolatedvertigo」となることが多い.このような症例(偽性前庭神経炎)では,小脳症状をはじめとする他の随伴症状を伴わないために,前庭神経炎などの末梢性疾患との鑑別が困難な場合もある.眼振の詳細な観察,diffusion MRI検査などが鑑別診断の鍵となる.
KEY WORDS
急性めまい 眼振 小脳血管障害 偽性前庭神経炎 diffusion MRI
はじめに
急性のめまいの診断で最も重要なことは,末梢性疾患と中枢性疾患との鑑別である.
急性の自発性めまいを示す末梢性疾患としては,前庭神経炎,メニエール病,めまいを伴う突発性難聴,そして,それ以外のいわゆる「内耳性めまい」などである.また,後半規管型の良性発作性頭位眩暈(BPPV)の患者が救急外来を訪れることは少ないが,水平半規管型のBPPVの患者は,めまい感と嘔気が強いために,しばしば救急外来を受診する.一方,急性のめまいを示す中枢性疾患としては,主に後頭蓋窩(脳幹ならびに小脳)の血管障害である.
めまいの救急患者について
1.概要
過去3年8ヵ月の期間に,当院の救急外来において当科(神経耳科)が診察しためまいの急患は321例である.当院では,脳神経障害,片麻痺,感覚障害,小脳症状などの中枢神経障害を随伴するめまい症例は当初から神経内科あるいは脳神経外科で診察し,耳鳴や難聴を随伴する場合や,めまい単独(isolated vertigoと呼称される)の患者は神経耳科が診察する.
めまいの急患321例のうち205例(63.9%)が救急車で来院した.男女別内訳は男性37%,女性63%である.全体の平均年齢は55.2歳であった.めまいの救急患者の月別受診者数は5,7,8,11月に多かった.
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。