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他科専門医からみた脳卒中

放射線科からみた脳卒中

Cerebral Stroke for Diagnostic Radiologists

井田正博

脳と循環 Vol.16 No.2, 33-37, 2011

SUMMARY
 脳虚血超急性期の診断にはMRは必須である.MRでは非可逆的組織障害の早期検出に有用で(拡散画像),非造影剤でも皮質枝閉塞の診断が可能である.MR診断には的確な臨床情報と撮像法原理のきちんとした理解が重要である.急性期から亜急性期においては病態および合併症の精査が必要であり,マルチスライス型CTによる躯幹部の造影CTが非侵襲的で有用である.したがってストロークユニットには脳卒中専門医に加えて放射線科専門医による画像診断管理が必須と考える.

KEY WORDS
画像診断医 放射線科専門医 脳梗塞超急性期 MR診断

Ⅰ.多くの画像診断医は「脳梗塞」が嫌い

 CT,MRに携わる画像診断医(放射線科専門医)の大部分は脳梗塞が嫌いである(そしてたぶん脳卒中専門医のことも嫌いである).少なくとも筆者もかつては脳梗塞が大嫌いであった.
 画像診断の研修の基本の一つは形態学である画像診断と病理診断の比較にある.カンファランスではクイズ形式の出題がなされるが,その基本は病理組織標本との対比で,非侵襲的な限られた画像情報から正確な局在診断,進展度診断,良悪性の鑑別,手術の適否,さらに予後に関わるsubtypeの診断をいかに極めるかにある.しかし「脳梗塞」は単に低吸収域もしくは高信号の「病変」であって,病理組織が得られることも稀であり,カンファランスの出題にも専門医試験の出題にもならない.したがって,だれもteaching fileを作製しようとしないし,臨床現場でもCTやT2強調画像で見える「脳梗塞」を診断しても今さら臨床的に何の役にたっているかわからないし,ましてや「無症候性ラクナ」だの,「血管周囲腔」との鑑別などに労力を費やしたくない.ただでさえ難しい脳の解剖に加えて血管支配解剖など覚える努力は払いたくない.
 しかし中枢神経領域が専門でなくても,毎日の読影においては「脳梗塞」には必ず遭遇する.それでは「脳梗塞」の読影を楽しくするにはどうしたらいいか?そのためには「脳梗塞」を単一病態として片付けないでその病態や病型をきちんと理解することが重要であり,脳卒中専門医とともにその診療に参加し,とくに超急性期において画像診断の力量を示すことにある.荏原病院では平成6年の開院時から①頭部MRには全例,拡散画像とMRAを施行,②脳梗塞超急性期症例には"MRfirst",③CT,MRは同日中に全例読影[現在ではCT,MR,核医学のみならず,すべての画像診断を読影,管理(画像診断管理加算2を算定,すなわち読影のみならず画像検査のすべてを管理する)]を基本方針としている.さらに開設されたストロークユニットにも積極的に関わっている.もし今でもCTとT2強調画像だけの診断で,すぐに読影できない環境下なら,筆者は今でも「脳梗塞は大嫌い」であっただろう.

Ⅱ.なぜ,MR firstか?

 血栓溶解療法の適否判定を目的とした脳梗塞超急性期(本稿では原則として発症24時間以内と考える)の画像診断の目的は,①非可逆的組織障害の早期検出,②動脈閉塞部位の診断および灌流領域の予測,③ミスマッチ領域の循環予備能の評価,④病型および病因の診断が挙げられる(表1).

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