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他科専門医からみた脳卒中

循環器内科からみた脳卒中

Stroke from the Viewpoint of Cardilogists

山下武志

脳と循環 Vol.16 No.2, 27-32, 2011

SUMMARY
 日本の社会の高齢化,生活習慣病の管理の普及は,脳卒中予防における心原性脳塞栓症の位置づけをこれまで以上に大きくしている.CHADS2スコアによるリスク層別化とワルファリンによる予防は普及しているものの,まだ十分とはいえない.しかし同時に,新しい抗血栓薬の登場とともに,CHADS2スコアで表される以上の一次予防が求められようとしている今,循環器内科として今後の新しい方向性を確立する準備を行う必要がある.

KEY WORDS
心房細動 心房期外収縮 ワルファリン CHADS2スコア ダビガトラン

はじめに

 脳卒中をすでに起こした患者については,循環器内科医がその後の管理をすることはむしろ稀かもしれない.その意味において,循環器内科は社会における脳卒中の予防においてこそ果たす役割が大きい.基本的に脳卒中の予防は,患者の有するリスク因子をいかに管理できるかに依存している.近年,薬物療法の発展とともに,高血圧,糖尿病,脂質異常症の管理が以前より容易となり,同時に厳格化している.このことは脳卒中の予防に多大な貢献をしているであろう.実際に,久山町研究の時代別変遷をみると,第一集団を基本にした場合に,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞の頻度は横ばい~減少している.脳卒中の候補者となる高齢者が増加していることを考慮すれば,リスク因子の管理は成功しているといえそうである.一方で,心原性脳塞栓症の増大は著しく,第三集団から計算される患者数は第一集団の2倍以上に及んでいる.このことは,循環器内科にとって今後の脳卒中予防における焦点が心原性脳塞栓症の予防に移行していることを教えてくれる.

心原性脳塞栓症の原因:心房細動

 現在の情報では,心原性脳塞栓症の原因として最も重要な疾患が心房細動である.多くの報告では,心原性脳塞栓症の約半数が心房細動によるとしているが,実際はこの「半数」という数字以上に心房細動の関与している割合は高いと想像されている.それは,脳梗塞を起こし,心房細動の既往や入院中の心房細動記録のない例を長期観察した場合にも,約15%の患者で発作性心房細動が記録されたという報告1),あるいは入院中の心電図・ホルター心電図で心房細動が記録されなかった脳梗塞患者ですら,7日間心電図の連続記録を行うと5%以上の患者で心房細動が記録されたという報告2)などに基づいている.
 これらのことは同時に,予想以上に心房細動という診断自身が難しいことを示唆している.慢性心房細動であればその診断は容易であるが,発作性心房細動では症状のない限り心電図を用いる方法には限界がある.しかし,脳梗塞という観点からみれば,慢性心房細動と発作性心房細動の位置づけは同等である3).その意味では,いかに無症候性発作性心房細動を見逃さないようにするか,あるいはみつけるようにするかという努力が,循環器内科医に求められているといえるかもしれない.
 単純に考えれば,心房細動の前駆不整脈といえる心房期外収縮に注目するという観点があるだろう.実際に,脳梗塞を起こした患者に限っては,心房期外収縮の多い患者では,その後心房細動を検出できる可能性が極めて高いとされている(図1) 2).

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