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他科専門医からみた脳卒中

一般救急からみた脳卒中

Stroke Care in Emergency Room

中村俊介有賀徹

脳と循環 Vol.16 No.2, 21-25, 2011

SUMMARY
 脳卒中は,症状が多彩であり,さらに非典型的な症例も存在するため,救急診療において注意すべき重要な疾患の一つである.また緊急度や重症度の高い症例では,二次的脳損傷の予防を念頭においた診療を行うことが求められる.近年,ISLS(Immediate Stroke Life Support)コースの開催によって,標準化された診療の手順について普及が進められている.脳卒中初期診療では,来院前の準備ならびにABCDEアプローチなどの系統的な診療を行うことが重要である.

KEY WORDS
脳卒中初期診療 ISLS アルゴリズム ABCDEアプローチ

はじめに

 典型的な脳卒中は突然の発症であるため,多くの症例は救急外来を受診する.脳卒中については,運動麻痺や構音障害,意識障害など症状は多彩であり,鑑別を要する疾患も多く,さらに非典型的な症例が存在するため,初期診療において注意すべき重要な救急疾患の一つである.また,緊急度や重症度の高い症例も多いため,二次的脳損傷の予防を念頭において,適切に初期診療を進めることが求められる.
 ここでは,脳卒中が疑われる症例に対する救急外来での準備,救急初期診療,さらに意識障害を中心とした鑑別診断や一般救急における脳卒中診療の注意点について概説する.

脳卒中初期診療

1.病院前救護と救急初期診療

 脳卒中の治療成績向上のためのキーポイントとして,AHA(American Heart Association)ガイドライン2000 1)では7つのD(Detection:発見・通報,Dispatch:出動,Delivery:搬送,Door:救急室へ入室,Data:情報・検査,Decision:方針決定,Drug:薬剤選択)が示されている.このうち最初の3つのDは発見者を含めた病院前救護が担い,4つ目のD以降は病院到着後の初期診療が担当するものとなる.
 近年,病院前救護や救急初期診療における標準化が進められている.病院前救護では,意識障害を呈する患者に対するPCEC(Prehospital Coma Evaluation and Care)や脳卒中に対するPSLS(Prehospital Stroke Life Support)などが策定され,標準的な手順についてコース開催による普及が進められている.同様に,病院到着後の脳卒中に対する初期診療についてはISLS(Immediate Stroke Life Support)が策定されており,各々についてはコースガイドブックも出版されている2)-4).脳卒中を含め,救急搬送される患者に対する初期診療は,病院前救護から連続した整合性のあるものでなければならない.このためにも,診療を担当する医療スタッフは病院前救護の活動内容や用語などについて精通することが求められる.
 ISLSは,脳卒中の専門医ではなく,脳卒中の初期診療に携わることの多い救急医や二次救急病院で当直する各科医師,診療所の医師,看護師,コメディカルを対象としたものであり,脳卒中初期診療についてのアルゴリズムが示されている(図1).

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