はじめに  高血圧性脳症(hypertensive encephalopathy)とは,頭痛,痙攣,視野障害,意識障害などの中枢神経症状が血圧上昇によって急速に出現する疾患である.頭部CTやMRIでは,後部白質を中心に血管原性浮腫と考えられる異常信号を認めることが多い 1).このような所見は,適切な治療により正常化する可逆的なものであることが多い 2).近年の血圧管理の徹底,降圧療法の進歩により,高血圧性脳症を経験することは稀になった.今回,妊娠中毒症発症時より開始していた降圧薬を中止してから10年後に発症した高血圧性脳症の1例を経験したので,その特徴的な脳画像所見を中心に報告する.