「Summary」近年,炎症と癌細胞動態のかかわりが注目されている。特に外科領域においては,外科手術侵襲によって引き起こされる術後SIRSが免疫機構に影響を与え,癌再発や予後に影響することが明らかになってきている。術後SIRSにおける重要なシグナル伝達機構として,ケモカインと呼ばれるサイトカインの一群の役割が注目されている。ケモカインのシグナルネットワークは白血球の遊走因子として炎症の分野で研究対象とされてきたが,さまざまな癌腫において,腫瘍や腫瘍環境におけるケモカインネットワーク発現が,癌細胞増殖・浸潤・血管新生・腫瘍細胞の遊走および転移との深いかかわりがあることがわかってきている。術後SIRSにおいても,炎症によりケモカインネットワークによるシグナル伝達が亢進し,癌転移再発に重要な役割を担っている可能性が明らかになってきている。