「Summary」癌の外科治療において,周術期合併症,特に周術期感染性合併症が癌の転移・再発に関与することがさまざまな癌腫で報告されている。したがって,手術侵襲に加えて周術期感染性合併症が発症することにより遺残癌細胞がアポトーシスを回避し,癌再発あるいは進展に好ましい環境になっていることが想定される。このような環境を呈する一因として癌-宿主interactionが注目されている。癌-宿主interactionの因子として,C-reactive proteinが注目され,宿主および腫瘍因子との関連について多くの報告がみられる。本稿では,周術期合併症発症と術後再発についてIL-6を介した腫瘍-宿主interactionの側面から考察する。

「はじめに」癌治療は,近年,新規薬剤の登場により飛躍的に進歩しているが,根治的治療を遂行するためには,外科治療が中心的な役割を果たす。外科治療においても,近年,著しい進歩により周術期合併症および手術関連死亡率は改善している。担癌患者の予後は腫瘍の内因的な要素だけでなく,腫瘍環境によっても決定されることは以前より認識されており,古くから周術期合併症が,さまざまな悪性腫瘍治癒切除後再発に影響を与えることが指摘されてきた1)2)。