<< 一覧に戻る

特集4 術後合併症と癌転移・再発

特集によせて

北川雄光

Surgery Frontier Vol.22 No.4, 73, 2015

慢性炎症と癌化は表裏一体の事象として捉えられ,多くの研究成果が報告されている。慢性肝炎から肝硬変を経て肝細胞癌が発生する過程やピロリ菌感染と胃癌,胃食道逆流症とバレット腺癌の発生など関連する事象は枚挙に暇がない。一方,さまざまな生体侵襲によって発生する高サイトカイン血症が癌細胞そのものや全身臓器の血管内皮細胞を活性化し癌転移に促進的に働くこと,すなわち「急性炎症と癌」のかかわりについても多くの知見が報告されている。近年,癌集学的治療が進歩し,多くの領域では,より強力な術前療法が行われるようになりつつある。術前療法のパワーが強ければ強いほど,治療成績が向上するという単純な仮説が必ずしも成り立たないことは多くの腫瘍外科医が認識している。一般的に強力な術前療法によって頻度が増加することが知られている術後合併症は多くの臓器,領域において癌の転移再発と関連し,予後不良因子として報告されている。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る