「Summary」癌幹細胞は腫瘍組織形成のもとになる細胞であり,治療抵抗性の高いことから,癌の再発,転移などの起源になると考えられている。胃癌においてはCD44陽性の癌細胞が癌幹細胞様の性質をもつことが報告されてきた。一方で胃癌の多くは,ヘリコバクター・ピロリ菌感染などによって胃粘膜で引き起こされた慢性炎症が要因となり発生することが知られている。慢性炎症を起こした組織では活性酸素種の産生が増加し,さまざまな細胞に高度な酸化ストレスが加わる。活性酸素種が胃の発癌過程においてどのように関与しているか,その詳細なメカニズムに関しては不明な点が多かった。筆者らは最近,胃粘膜の慢性炎症にともなって発生した活性酸素種がCD44陽性癌細胞の出現を誘導し,前癌病変の形成にかかわることを見出した。本稿では,慢性炎症を背景とした胃発癌過程における癌幹細胞成立機構について最新の知見をもとに概説する。
特集3 癌幹細胞
3.慢性炎症起因性胃癌の成立機構
Mechanism for inflammation-associated gastric tumorigenesis
掲載誌
Surgery Frontier
Vol.22 No.4 68-72,
2015
著者名
清島 亮
/
佐谷 秀行
/
永野 修
記事体裁
抄録
疾患領域
癌
/
消化器
診療科目
消化器内科
/
消化器外科
/
腫瘍内科
媒体
Surgery Frontier
Key Words
癌幹細胞,CD44バリアント,活性酸素種,酸化ストレス,前癌病変
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。