「Summary」2007年にヒト大腸癌で癌幹細胞が発見されて以降,研究成果の蓄積によりほとんどすべての消化器癌において,癌幹細胞の存在が明らかとなっており,癌幹細胞が発癌・癌進展に中心的な役割を果たすことがわかってきた。まだ初期の段階ではあるが,癌幹細胞を標的にした治療法は,現在癌医療が直面するさまざまな課題を克服する可能性があり,将来的には癌を完全に治癒できるところまで発展することが期待されている。本稿では,消化器癌での癌幹細胞の発見の経緯から,今後の癌幹細胞を標的とした治療への展開まで,最近の知見をふまえ概説する。

「はじめに」消化器癌を始めとする多くの癌種において,化学療法によりいったんは治療効果を示すものの,数年経ってから再発する症例が多く存在する。この現象を裏付けていると考えられているのが,近年着目されている癌幹細胞の存在である。

「Key Words」癌幹細胞,消化器癌,上皮間葉転換,治療抵抗性,癌幹細胞マーカー