「Answer」
「はじめに」周術期の血栓予防と言えば主として静脈系の血栓ということになる。大きくは深部静脈血栓症(deep venous embolism:DVT)と肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)に分けられるが,近年PTEの原因の90%以上がDVTであることから,まとめて静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)と総称される(図1)。
「疫学」以前の報告では諸外国においてわが国のVTE発症頻度は低いと報告されていたが,近年は生活環境の欧米化などもありほとんど変わらないと言われている1)2)。PTEはいったん発症すると,その死亡率は約20%と高く,予防することが重要である。わが国でも2004年にガイドラインが作成され,その重要性が認知されることとなり,理学療法が広く普及して発症頻度は減少した。それによって症候性PTEは2003年に4.8人/万手術であったものが2006年には2.3人/万手術まで減少した3)。しかしながら,その後は軽度増加傾向にある。