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実験講座

ラット胃・十二指腸液逆流モデルを用いた発癌研究

向所賢一服部隆則杉原洋行

Surgery Frontier Vol.22 No.3, 71-75, 2015

「Summary」われわれは,ラット胃・十二指腸液逆流モデルを用いて,主にBarrett食道の発生や発癌にかかわる研究を行ってきた。Barrett粘膜の発生には2通りが考えられる。十二指腸液をともなう逆流刺激が強い際に,食道扁平上皮基底層の幹細胞が円柱上皮に化生し,杯細胞を有するBarrett粘膜が発生する場合と,逆流刺激が軽度な際に食道のびらんや潰瘍を修復するように胃噴門腺が延長してcardiac-type mucosaが発生する場合とがある。食道腺癌および食道胃接合部癌の罹患率が欧米で急増した背景には高脂肪食摂取にともなう肥満がある。肥満により腹圧の上昇や下部食道括約筋の機能低下が起こり,胃内で十二指腸液の逆流量が増加,発癌物質であるニトロソ胆汁酸が形成され,食道に逆流する。高脂肪食摂取は胆汁酸分画を変化させ,高酸状態でも沈殿しないタウリン抱合胆汁酸が増加する。このように,逆流モデルを用いた研究により,GERDに関連したBarrett食道の発生から発癌に至る過程を考察できた。
「Key Words」ラット胃・十二指腸液逆流モデル,Barrett食道,食道腺癌,高脂肪食,タウリン抱合胆汁酸

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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