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第72回代謝制御因子のアップデート インクレチン
Surgery Frontier Vol.19 No.1, 54-59, 2012
「はじめに」糖尿病とは, インスリン作用の不足により生じる.慢性の高血糖を主徴とする代謝症候群である. インスリン作用の不足とは, すなわち, 膵β細胞からのインスリン分泌障害と, 末梢組織(肝臓・筋・脂肪)におけるインスリン抵抗性の増大を意味する(図1). 糖尿病患者の大多数を占める2型糖尿病では, インスリン分泌障害とインスリン抵抗性増大という2つの障害が種々の程度に存在しており, 糖尿病の治療とはこの2つの障害の改善を目的としている. 医学の進歩にともない, そのための選択肢は年々増え続けているが, 年々増加する糖尿病患者に対して長期に渡る安全で効果的な血糖管理を行うことは, なお容易ではない. そのなかで, 2型糖尿病に対する新たな治療戦略として, 「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンが脚光を浴びている. インクレチンとは, 食事摂取にともない消化管から分泌され, 膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり, これまでにglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)とglucagon-like peptide-1(GLP-1)の2つのホルモンが, インクレチンとして機能することが確認されている.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。