Answer はじめに  食道癌は,癌細胞が転移・浸潤を起こしやすいという性質のみならず,転移の経路が複雑であり,漿膜を有さず浸潤が容易であるという解剖学的な臓器の性質を有するために,消化管癌のなかで最も治療抵抗性であり,早期癌の段階で患者を治療することが予後の改善を得るためには特に重要である。日本においては,男性の癌死亡原因の第6位である。食道癌発生は,歴史的に生活習慣との関連が深く示唆されてきた。また,近年の分子生物学の進歩はめざましく,これまで未知であった癌の発生メカニズムを明らかにしつつある。それらは,生まれたそのときから親から引き継いだ遺伝子そのもの,また,生活環境(喫煙・飲酒・感染)や二次的要因により引き起こされた遺伝子発現の変化,とさまざまである。本稿では,食道癌発生のリスクファクターを要約する。