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栄養のKEY NOTE

【栄養と免疫】栄養と免疫機能

酒井徹

Surgery Frontier Vol.18 No.4, 84-86, 2011

栄 養
 多くの人は,朝昼晩と3回の食事を摂っている。食事は1日1回あるいは2回という人もいるかもしれない。しかしながら,間違いないことは,日々生きるため,あるいは生命活動を行うためには,栄養を補給しなければならない。栄養は自動車のガソリンにたとえられることが多い。ガソリンはエンジンを駆動させるエネルギー源であるが,栄養は生命活動のエネルギーであるATP (adenosine triphosphate)を生み出すのみならず,生命維持活動を向上させる機能を付与させる。ヒトを対象とした疫学研究の成果でも,人々が日々摂取する食品,たとえば野菜,果物,脂肪,食物繊維などが生活習慣病の発症リスクを低下させることが判明している。

免 疫

 免疫機能は,感染症との戦いから進化を遂げた高次機能である。免疫系の特徴として,自己・非自己の認識機構が挙げられる。自己と異なるウイルスや細菌抗原に対しては攻撃を仕掛け,一方,自己を構成する成分に対しては反応を示さないといった,厳密な機構が免疫系には存在する。それに加え,免疫系は非常に緻密なバランスを保っており,それらバランスが破綻すると,身体に不都合が生じる。春先,花粉症に悩む人も多い。これは花粉抗原に対し免疫細胞が過剰に反応した結果,出現した症状である。ソバアレルギーは死にも至る重篤な症状を呈する。通常は,口から摂取した食物抗原に対しては,自己と異なる抗原であっても免疫細胞は応答しない機構が誘導される(経口免疫寛容)。食物アレルギーは,経口免疫寛容がうまく機能しなくなった結果生じたものである。

免疫機能の評価

 ちまたでは“免疫機能をアップさせる食品”とのキャッチフレーズを売りにした健康食品が販売されている。そもそも免疫機能とは何か?免疫機能を司る細胞および液性成分は多岐にわたる。細胞成分であれば,T細胞,B細胞,NK細胞,マクロファージ,樹状細胞等々,液性成分であれば,抗体,補体,サイトカイン,リゾチーム等々である。厳密に免疫機能を評価するためには,多岐にわたる免疫構成細胞および成分を評価しなくてはならない。通常は,少数のパラメーターを指標として,その増減で“免疫機能が上がった,下がった”と表現されることが多い。つまり,総合的な評価で,免疫機能を評価する基準の算定はなかなか難しいのが現状である。現に,免疫機能に関する特定保健用食品はこれまで認可されていない。

低栄養と免疫機能

 栄養状態や身体状態が免疫機能に影響を及ぼしていることは,経験的に知られている。たとえば,急性上気道炎やウイルス感染に罹患しやすくなるときは,身心的に疲労状態や食欲がない状態であることが多い。
 現在,世界人口の約30%は栄養欠乏の状態であり,栄養欠乏が原因となる死因としては感染症によるものが多い。低栄養は発展途上国に限定した問題ではなく,先進国でも高齢者や入院患者で重要な健康問題となっている。毎年,冬になるとインフルエンザが猛威を振るう。感染予防のひとつとしてワクチンがあるが,栄養状態が悪い人(血清アルブミン値が低い人)は,ワクチンによるウイルス抗原に対する抗体産生が低下しており,また,実際の予防効果も栄養状態がよい人に比べ減弱している1) (図1)。

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