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実験講座

ドナー特異的B細胞免疫応答の解析法

大段秀樹

Surgery Frontier Vol.18 No.4, 79-83, 2011

Summary
 血液型糖鎖抗原に反応するB細胞は,T細胞非依存性に活性化する。一方,HLAペプチド抗原に反応するB細胞は,T細胞依存性に抗体産生細胞に成熟する。本稿では,血液型糖鎖に応答するB細胞とHLAに応答するB細胞の解析法を概説する。

Key Words
HLA,antibody-mediated rejection,B細胞

はじめに

 臓器移植におけるB細胞性免疫応答には,T細胞依存性と非依存性に分類できる。血液型糖鎖抗原に反応するB細胞はT細胞非依存性に活性化する。連続する糖鎖抗原がB細胞受容体を架橋すると,T細胞からの刺激を要せず,活発な抗体産生が誘導されると考えられる。通常のB細胞(B-2細胞)と異なる起源,特異性,組織局在をもつユニークな細胞集団であるB-1細胞に,このような応答が由来することをわれわれは報告した1)2)。B-1細胞は,自己抗体産生細胞として自己免疫疾患に関与することも知られ,B-2細胞に比べ強い細胞走化活性や抗原提示能などの特徴を有する。
 一方,組織適合性抗原HLAなどもペプチド抗原に反応するB細胞は,T細胞依存性に抗体産生細胞に成熟する。T細胞と接触しながら,サイトカインの刺激を受け,増殖を繰り返しリンパ節に濾胞を形成し,イムノグロブリンのクラス変換を経て有効な抗体産生が誘導される。本稿では,血液型糖鎖に応答するB細胞とHLAに応答するB細胞の解析法を概説する。

B細胞の分化機構

 造血幹細胞がリンパ系幹細胞へ分化したのち,プロB細胞を経てH鎖の遺伝子再構成が起きる。完成したH鎖と代替L鎖(surrogate light chain)とともにpre-BCR (pre-B cell receptor)を形成,大型プレB細胞となる。そこでpre-BCRシグナルにより一度増殖したのちに,L鎖の遺伝子再構成が引き起こされ,やがて小型プレB細胞へと分化する。完成したL鎖はH鎖とともにIgMを形成して,細胞膜上に発現する(BCR)。そして,IgMとともに同じ抗原特異性をもつIgDも発現し,B細胞は骨髄から末梢へと移行し,脾臓において成熟B細胞となる。
 成熟B細胞は,B-1細胞とB-2細胞の2亜群に分類され,それぞれの分化も機能も異なる。一般に,B-1細胞は自然免疫応答の一部としての抗体産生を,B-2細胞は獲得免疫応答としての抗体産生を司ると考えられている3)。成熟した末梢中のB-2細胞は抗原と曝露し,ヘルパーT細胞からのシグナルを受けてfollicular B細胞へと分化し,Igクラススイッチング,ソマティックハイパーミューテーション,プラズマ細胞への分化をきたす。臓器移植における,アロペプチド抗体関連拒絶反応を担うのが,このタイプのB細胞応答である。
 このようなB-2細胞の分化は出生後に発生するが,B-1細胞の分化は胎生期より起こる。出生後のB-1細胞の分化機構には,2つのモデルが提唱されている4)。Lineageモデルでは,B-1細胞の前駆細胞はB-2細胞の前駆細胞とは異なり,胎生期より存在する前駆細胞から生後も分化し続けるというものである。もう1つはSelectionモデルで,共通の骨髄由来前駆細胞から,曝露する抗原種の違いによってB-1細胞かB-2細胞に分化するというものである。どちらのモデルにせよ,B-1細胞は,自然免疫様に迅速な応答を示し,T細胞非依存性の抗原応答を司ると考えられている。B-1細胞は,B-1a細胞(IgMhighCD11bCD5)とB-1b細胞(IgMhighCD11bCD5)に細分されるが,両者のB細胞受容体のレパートリーの違いが報告されている5)。

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