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第71回粘膜の監視・排除・共生システム 小腸特異的リンパ球ホーミング
Surgery Frontier Vol.18 No.4, 68-71, 2011
はじめに
ナイーブリンパ球は血管系と二次リンパ系器官を再循環している。二次リンパ系器官で抗原と出会い活性化すると,非リンパ系組織への移動が可能となる。特に,その抗原と出会ったリンパ系器官が所属する組織に移入する性質を獲得する。このような移入を組織特異的ホーミングという。これにより,抗原特異的なリンパ球を抗原の侵入部位に的確に移動させることが可能となる。ホーミング特異性をリンパ球にインプリントするメカニズムは長年,謎であった。われわれは,小腸ホーミング特異性をインプリントするメカニズムに,ビタミンA代謝産物のレチノイン酸(retinoic acid;RA)が必須の役割を演ずることを発見した1)2)。
小腸特異的ホーミング受容体
リンパ球ホーミングにともなう血管外への移動は,後毛細血管細静脈(postcapillary venule;PCV)で起こる。小腸組織PCVには,細胞接着分子 MAdCAM-1 (mucosal addressin cell adhesion molecule-1)と小腸上皮細胞の産生したケモカインCCL25 (TECK)が存在する(図1)。
そのそれぞれに結合するα4β7インテグリンとCCL25受容体CCR9が小腸特異的ホーミングに必要な「ホーミング受容体」となる。ただし,IgA+形質芽細胞の場合にはさらにCCR10も関与する3)。炎症性腸疾患では腸のMAdCAM-1発現が上昇し4),腸粘膜へのβ7+T細胞の移行が増加する5)。クローン病では,小腸CCR9+T細胞の多くが炎症性のTh1とTh17になる6)。
レチノイン酸(RA)の役割
RAは,リンパ球活性化の際に作用してα4β7とCCR9の発現を誘導する1)7)。腸間膜リンパ節やパイエル板には,ビタミンAからRAを合成する能力をもつ樹状細胞が存在し,抗原提示の際にRAを与えてリンパ球に小腸ホーミング特異性をインプリントする(図2)1)。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。