Summary
われわれはこれまで,広島・長崎の原爆被爆者,チェルノブイリ原発事故などから,放射線が人体に与える影響について調査研究を継続している。しかしながら,低線量領域では,その発癌リスクの上昇は検出できない。個人の遺伝的背景や生活習慣,ほかのリスク要因などの交絡因子の影響が大きく,疫学的に検証するのはきわめて困難である。チェルノブイリ事故後の被曝住民に対し,これまでにコンセンサスの得られた放射線による健康影響は,短半減期の放射性ヨード被曝によると思われる小児甲状腺癌の増加のみである。ほかの長半減期核種である137Csなどでの健康影響は証明されていない。一方,直接放射線によるものではないが,精神的・心理的影響は甚大であり,チェルノブイリの教訓が福島に生かされる必要がある。福島では,今後とも実害と風評被害への対応,具体的には継続した放射線リスクコミュニケーションと,健康ならびに環境汚染モニタリング体制の拡充が重要である。
全文記事
大震災後のよりよい医療の復旧・復興を目指して
放射線の人体への影響―チェルノブイリの教訓から―
Radiation effects on human health : lessons from Chernobyl
掲載誌
Surgery Frontier
Vol.18 No.4 29-33,
2011
著者名
光武範吏
/
山下俊一
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
癌
/
その他
診療科目
一般外科
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耳鼻咽喉科
/
小児科
/
放射線科
/
その他
媒体
Surgery Frontier
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