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What's New in protease inhibitor

DICの臨床とプロテアーゼインヒビター

朝倉英策

Surgery Frontier Vol.18 No.3, 121-127, 2011

Summary
 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,基礎疾患の存在下における全身性持続性の著明な凝固活性化状態という点では共通しているが,線溶活性化の程度,臨床症状,変動しやすい検査所見などの点で相違点も多い。線溶抑制型DICは敗血症,線溶均衡型DICは固形癌,線溶亢進型DICは急性前骨髄球性白血病,大動脈瘤,一部の癌に合併したDICに代表される。DICの診断は,厚生労働省DIC診断基準が最も普及しているが,感染症に合併したDICに対する感度が悪いなど,改善すべき点が多い。DICの治療を行う場合,画一的な治療を行うのではなく,病態に応じて治療方法を選択するという方向性が望まれる。合成プロテアーゼインヒビターは,アンチトロンビン非依存性に抗トロンビン活性を発揮する。代表的薬剤であるナファモスタットメシル酸塩は臨床使用量で抗凝固活性のみならず抗線溶活性も強力なため,特に線溶亢進型DICに有効であり,出血症状が前面に出るタイプのDICに対して相性がよい。

Key Words
播種性血管内凝固症候群(DIC)/合成プロテアーゼインヒビター/組織因子/線溶抑制型DIC/線溶亢進型DIC

DICとは

 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)は,基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化を来し,細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態である。凝固活性化とともに線溶活性化が見られるが,その程度は基礎疾患により差違が見られる。進行すると血小板や凝固因子といった止血因子が低下し,消費性凝固障害の病態となる。
 DICの二大症状は,出血症状と臓器症状であるが,臨床症状が出現すると予後は極めて不良となるため,臨床症状の出現がない時点で治療開始できるのが理想である。DICの三大基礎疾患は,敗血症,急性白血病,固形癌であるが,そのほかにも多くの基礎疾患が知られている。
 DICの病態には相違点が多く,画一的な治療を行うのではなく,病態に応じた最も適切な治療法を選択するというような方向性が望まれる。

DICの病態

 敗血症においては,リポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF),IL (interleukin)-1などの炎症性サイトカインの作用により,単球/マクロファージや血管内皮から大量の組織因子(tissue factor:TF)が産生され,著しい凝固活性化を生じる。また,血管内皮上に存在する抗凝固性蛋白であるトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の発現が抑制されるため,凝固活性化に拍車がかかることになる。さらに,血管内皮から産生される線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が過剰に産生されるため生じた血栓は溶解されにくい1)-3)。
 一方,急性白血病や固形癌などの悪性腫瘍においては,腫瘍細胞中の組織因子により外因系凝固が活性化されることが,DIC発症の原因と考えられている。血管内皮や炎症の関与がほとんどない点において,より直接的な凝固活性化の病態となっている。

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